「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
ジェシカを王都に送り出したのは、オルレイの独断だった。早く斑紋の娘を屋敷から追い出したくて、騎士団が到着する前に放り出した。しかし本来は騎士団がジェシカを迎えに来る予定であった。だが、オルレイはそれを待たずにジェシカを王都へと送り出した。しかもジェシカを乗せたのは、すぐに壊れてしまいそうなあのぼろ馬車だ。オルレイが今更自分の大失態に気づいてももう遅い。
なぜあの時、自分の感情を優先させてしまったのだ。
数日待てば、騎士団が到着してあの娘を連れだしてくれたものを……。
なんて馬鹿なことをしてしまったんだ。
しかしあの娘はオリエを殺そうとした……そうだ殺そうとした。
「へ……陛下、申し上げます。あの娘はオリエを、私の娘を殺そうとしたのです。近くに置いておくのは危険と判断して……」
オルレイがそこまで話すと、オルレイの言葉をゾイド王が遮った。
「娘を殺そうとした?だからどうした?国の、世界の命運がかかっているのだぞ。お前の娘と世界どちらが大事だ?そんなことも分からないのか?馬鹿者めが!!」
まるで落雷が落ちたかのようなゾイド王の声が広間に響き渡った。オルレイは今にもその場に倒れてしまいそうなほど真っ青になっていた。倒れないよう両手を握り絞め、意識を保とうと必死だったが、むしろ倒れてしまった方が良かったのかもしれない。このまま王の威圧を前にしていては、生きた心地がしない。ガタガタと震えながら、今はさらなる王の怒りをただ受け入れるしかなかった。
王の怒りは凄まじく、周りで見ていた重鎮達も振るえ上がっている。
しかし起こってしまったことをとやかく言っても仕方がないと、怒りを吐き出したゾイド王は、ゆっくりと息を吸い込むと、怒りを鎮めた。
「エンドレイク辺境伯、そなたの処分は追って沙汰を出す」
王の言葉にオルレイはガクリと肩を落とした。そんなオルレイを無視して、王は重鎮達からその他の報告を受けた。その中にジェシカの報告もあったが、ジェシカの捜索から1ヶ月、何の手がかりも見つからない。今日の報告も何も見つからなかったと言う言葉しか聞くことは出来なかった。
「ジェシカ嬢はいったいどこへ消えてしまったのだ……」
ゾイド王の小さな呟きは誰にも聞こえなかった。