「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「きゃー!おいしそうなケーキ!」
今日は町でお茶の葉と、ケーキを買ってきた。それを頬張りながら幸せを感じていた。この森に来てから幸せなことばかりだ。これもあの時、馬車が崖から落ちてくれたおかげだ。あの日、護衛をしてくれていた傭兵と騎兵には感謝しかない。
でも、後で怒られているだろうな……。
魔王を崖に落として、行方不明にさせているんだから。お父様達も何かしらの罰が与えられていると思うけど……。まあ、そのへんは気にしないことにしよう。
今はケーキが最優先。
だってこれは私が一生懸命集めた薬草を薬にして、それを売ったお金で買ったものだ。私の労働に対する対価なのだ。私は3年前、町に薬を売りに行くことを思いついた。
薬が売れれば、美味しいものが手に入るのでは?と、私は考えた。
人と関わるのは怖かった。魔王だとバレる可能性もあるし、人と関わることで魔王になるリスクが高まるのではと思ったが、甘いものが食べたい!食べてみたい!その思いだけで町へと出向くことを決意した。そのために薬草を使って薬を作り始めた。初めは薬の作り方も分からず苦労した。だからいろいろな薬草の効能を確かめながら試行錯誤した。失敗しながら何度も薬を調合し続けた。時間だけはたっぷりあったため、沢山薬を試して作り続けた。
薬作りに成功すると、小さな子供に変身して町の薬屋に持って行った。初めこそ不審がられていたが、足の悪い姉が森の奥で薬を作っていると言うと、同情から薬を買ってくれた。
今ではジェシカがジェシーとして持っていく薬は良く効くと町で有名になっている。
ふふふっ、私の薬が誰かのためになるなんて嬉しいことだ。
美味しいケーキを頬張りながら、幸せを噛み締めるジェシカだった。