「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
その日の夕方。
左腕の包帯を巻きなおしていると、そこに騎士が通りかかった。そして俺の腕を見て驚愕する。
「そ……それは?!」
「これは生まれた時からある痣ですよ」
「まさか……よく見せてくれ」
騎士に腕を取られ、戸惑う俺の元に両親がやって来た。
「騎士様、うちの息子がどうかしましたか?ご迷惑をおかけしましたか?」
「いや、あなた方は、この方のご両親ですか?お聞きしたいのですが、息子さんのこの痣は産まれた時からのものですか?」
「はい。産まれた時からある痣です」
「あなた方はこの痣について知っていますか?」
「え?いえ……奇麗な花の模様だなと……」
騎士からの質問に、父が言い淀む。そんな父に向かって、騎士はため息をついた。
「これはおそらく『勇者の聖痕』です」
「まさか……」
母が口元を押さえて息を呑んでいる。そんな母に向かって、騎士が興奮を抑えた様子で話し出した。
「すぐに王城に伝令を出します。その答えが返ってくるのを待ち、すぐに村を出て王都へ向かいます。勇者に認定されれば、魔王を撃つための儀式がすぐに行われます。家族とはしばらく会えないと思われるため、きちんとお別れを済ませてください。村の人々にはご内密にお願いします。勇者と認定された際には陛下から村に使者が使わされますので宜しくお願いいたします」
一気に今後のことを説明され、俺たちは面食らった。突然のこと過ぎて頭の整理が追い付かない。とりあえず、伝令を待つ間に、家族との別れを惜しめと言っているのだろう。呆然としている俺を見た父が、騎士に話しかける。
「分かりました。ではそれまでは普通に生活していて良いということですね?」
「はい。秘密が守れるならかまいません。では、私は報告があるので」
騎士は俺たちに背を向けて、行ってしまった。
「俺が勇者……」