「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「気持ち悪い。あなたは馬鹿ですか?いくらなんでも拗らせすぎでしょう。会ったこともない女性に恋とか、しかも魔王に?意味がわかりませんよ」
いつの頃からか、俺は会ったこともないジェシカ嬢に対して、言いようのない感情を抱くようになっていた。それは好意なのか、敬愛なのか?愛情なのか?執着なのか?自分でもよくわからないのだが、心が惹かれるというのだろうか、ジェシカ嬢を強く想うようになっていた。
「ずっと森の中にいるからおかしくなってしまうのですよ。今日は町の方にでも見回りに行ってきてください」
俺はルノアに森から追い出された。
仕方がなく、俺は町に向かった。町に着くと、いつもと変わらない人々の日常が広がっていた。王都と違ってそこまで人は多くないが、活気にあふれる良い町だと思う。しかし良い町でも犯罪はそれなりにある。そのため、俺たち騎士が時々巡回をしたりしていた。
ゆっくりと町の中を歩きながら、犯罪防止のため目を光らせる。俺がこうして歩くだけで犯罪が減るなら、いくらでも歩こう。そんなことを思っていると、俺の前を大きなかごに薬瓶を沢山入れて運ぶ少女がよたよたと歩いていた。危なっかしく歩く少女に近づくと、怖がらせないように背後から声をかけた。
「そんなに沢山の薬を何に使うのだ?」
少女は俺の声にビクッと肩を震わせながら、ゆっくりと俺の方へと振り返った。振り返った少女は目深にフードを被っているため、表情を確認することは出来ない。しかし、フードの奥の瞳は俺を警戒しているように思う。
「すまない。かごがずいぶんと重そうで声をかけてしまった」
「…………」
返事をしない少女。