「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 それもそうだ。知らない男に声をかけられて、ホイホイついていくようでは困る。すぐに人さらいに攫われてしまうだろう。俺はふっと口角を上げると、少女のかごを掴んだ。

「これはどこに持っていくんだ?家か?」

「…………」

 そう尋ねても少女は口を開かない。

 俺が信頼できる人間なのか、見極めようとしている。

 合格だ。

 すぐに人を信用せず、相手をきちんと見て行動する。小さいのによく教育されていると思った。

「大丈夫だ。俺は騎士だ。人を守るのが俺の仕事だから、そんなに警戒しなくていい」

 フードの下から、小さく息を吐く音が聞こえてきた。

 そして……。

「騎士様ですか?」

 少女の口から鈴を転がしたような、可愛らしい透き通る声が聞こえてきた。その声に俺の体はビリビリと震えた。何も考えられなくなるような感覚。頭の中が真っ白になって、指の一本も動かすことが出来ない。そのままの状態で固まっていると、少女が俺を呼んだ。

「騎士様?」

 可愛らしい声で俺に話しかけてくれていることが嬉しくて、泣きそうになった。

 やっと会えた。

 そんな既視感のようなものまで感じた。

 一人でバカみたいな顔をしていたのだろう。少女が俺の服の裾を引っ張った。

「騎士様、大丈夫ですか?薬飲みますか?」

 俺を気遣ってくれるのか?

 それが嬉しくて歓喜で震えてしまう。



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