「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
しかし、ずっとこのままではいられないため、息を吸い込んで平静を装う。
「薬は大丈夫だ。ありがとう。それでこのかごはどこに持って行くんだ?」
「薬屋さんに持っていきます。今日は納品日なので」
「では俺が運んでやろう」
「でも、騎士様も仕事があるのでは?」
「大丈夫だ。これを運ぶぐらいの時間はある」
強引に少女の手伝いを願い出る俺に、少女は困惑している様子だ。それでも強引に話を進める俺に根負けして、少女は薬屋の場所を教えてくれた。薬屋へと向かいながら俺たちはいろいろな話をした。それだけで、少女の聡明さは十分すぎるほどに分かった。
薬屋に到着すると、慣れた様子で少女は中に入って行った。
「おばちゃん、こんにちは!薬の納品に来ました」
「おや、ジェシーちゃんかい。よく来たね」
そう言って、薬屋の主人が少女を見てから、俺に視線を移した。
「今日は騎士団長様と一緒なんて、何かあったのかい?」
「騎士団長様?」
薬屋の主人の言葉にジェシーと呼ばれえた少女は、バッとこちらに体を向けたかと思うと、勢いよく頭を下げてきた。
「騎士団長様とは知らず、失礼いたしました」
見るとギュッと握られた手が震えていた。
「大丈夫だ。そんなに畏まらないでくれ。名を名乗ることをしなかったのは俺だ」
そう言うと少女はゆっくりと顔を上げた。
「俺はこの国の騎士団長、ジュウド・オーグランだ」
「私は薬師のおねえちゃんの手伝いをしているジェシーです」
「ジェシーか、いい名前だ。今日はこの後、何か予定はあるのか?」
「えっと、お茶をしたら、お菓子を買って帰ります」
「そうかそれなら……」