「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 建物の死角になる場所に女性は倒れていた。見るからに顔色は悪く、呼吸も浅い。そして出血がかなり多い。女性の痛ましい姿にジェシカが息を呑んでいると、そこに5歳ぐらいの男の子と男性が走って来た。

「お母さん!」

「ミーネ、どうしてこんな……」

 絶句する男性と、泣きじゃくる男の子。私はそんな二人を横目で見ながら考え込む。先ほどポーションは使い切ってしまった。傷薬ではこの女性の傷には……。考え込む私に騎士団長様が声をかけてきた。

「ジェシー、薬屋にポーションは置いていないのか?」

「先日ポーションは高値で売れたと、薬屋のおばちゃんから報告を受けたの。薬屋に置いてあるポーションは1本だけでした……」

「そうか。君の家にはあるのか?」

「はい。ありますが、今から取りに行っていてはこの女性は……その……間に合いません」

 女性の家族が近くにいるため、言葉を選んで騎士団長様と会話した。このままでは女性を助けることは出来ないだろう。しかし私には魔法がある。魔法は使えるが、目立ちたくはなかった。自分が魔王だとばれる危険性は避けたかった。しかしそんなことも言っていられない事態が起きた。

 私はこの人を助けたい。


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