「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい


 *

 俺の目の前でジェシーが歌うように呪文を唱えると、ジェシーの体が淡く光り出した。ジェシーの魔力によってふわりと風が舞い上がり、ジェシーの被っていたフードがバサバサと音を立てる。

 ジェシーの歌うような魔法の呪文は神秘的だった。周りの空気をも変えるような圧倒的な存在感で、女性を見守る人々が息を呑んでいる。そんな我々に気づくことなく、ジェシーは呪文を唱え続けていた。更に風に揺られて、ジェシカのフードが脱げた。するとフードの中に収められていた髪がサラサラとゆれた。淡く光る体と同様、黒の混じった白い銀色の髪が淡く光り、その美しさと言ったら神や女神と同様に美しかった。

 俺はあまりの美しさに見惚れて息を呑んだ。

 しばらくするとジェシーの体を覆っていた淡い光が静かに消えていく。すると横になっていた女性の手がピクリと動いた。

「お母さん!」

 男の子が女性に駆け寄ると、男の子と一緒にいた男性も駆け寄った。それから女性を囲み二人は涙をこぼした。

「ありがとうございました。ミーネを……妻を助けていただきありがとうございました」

 負傷していた女性、ミーネの夫だろう男性がジェシーに向かって深々と頭を下げた。男性からジェシーに視線を移すと、ジェシーは顔を青くさせ、ふらつきながら呼吸を荒くさせていた。

 これは……魔力枯渇か?


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