「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 モジモジとそう言うと、薬屋のおばちゃんが「おやまあ」と言いながら笑った。何か勘違いをさせてしまっただろうか。何だか生ぬるい笑みが向けられて、恥ずかしい。部屋の空気がおかしなことになってきたので、私は話を変えて薬屋のおばちゃんに話しかけた。

「おばちゃん、森の中に岩の洞窟があるんだけど知ってる?」

「岩の洞窟かい?いや、私はここに小さなころから住んでいるが、そんな洞窟は聞いたことがないよ。その洞窟がどうしたんだい?」

「うん。その洞窟に珍しい薬草があって、これなんだけど」

 私はポーチの中から薬草を取り出してカウンターに置いた。それを見た薬屋のおばちゃんは驚愕した。

「こっ……これはリコリスの花かい?」

「うん。たぶんそうだと思う。ずっと綺麗な花だなとは思ってたんだけど……調べてみたらもしかしてって……やっぱりリコリスの花なんだ」

 リコリスの花は魔力が溜まるような場所に群生する。魔力が溜まるには条件があり、それが揃(そろ)うことは滅多になく、幻の花と言われていた。

「ジェシーちゃん、この花のことを誰かに話したかい?」

「ううん。おばちゃん以外には話してないよ」

「そうかい。なら、このことは私以外に話したらいけないよ。良いかい?」

「うん。わかった」

「この花は特殊な花なんだよ。そうさね……聖教会に持っていくのが良さそうだね。きっと良い値段で買ってくれるさ」




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