「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
それにしても、どうして騎士団長様はこの洞窟に入ることが出来たのだろう?一応結界も張っていたし、人の気配に私が気づかないなんてそんなことは一度だってなかった。人が近いて来ればすぐにわかるはずなのに……。
私は大きなリトの背中に隠れながら、騎士団長様を見た。すると騎士団長様が剣を抜き身構えた。
騎士団長様は何をしようとしているの?
まさか……。
こちらに剣先を向けながら騎士団長様が声を張り上げた。
「お前は魔獣か?その子をどうするつもりだ?」
騎士団長様はリトに向かって恐ろしいほどの威圧を放っている。ビリビリとした空気に、その場が冷たく冷えていくような気がした。そんな騎士団長様に向かってリトも毛を逆立て、喉奥から低い声で威嚇を続ける。一触即発と言った状況に、私は冷や汗を流した。
「リト、やめなさい。大丈夫だから」
リトの背中を撫でながら、優しく声を掛けると「きゅん」と大きな体から聞こえてきたとは思えないような可愛らしい声がした。思わずふふふっ……と笑い声が漏れてしまう。
そんな私を見た騎士団長様が、威圧を弱めながら体の力を抜いてくれたのが分った。