「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「その魔獣はきみに危害を加えないのか?」
「大丈夫です。この子は私の友達ですから」
「そうか。それなら良かった」
表情を緩めた騎士団長様が、そう言いながら剣を鞘に収めるのを見て、私は胸を撫で下ろした。
「ところで君はここで何をしていたんだ?」
「あっ……私はいつもここで体を清めているんです」
「ではこれから?」
「いえ、もう終わって帰るところです」
私がそう言うと騎士団長様は少し考え込んでから、近くにある平らな岩に視線を移した。
「もし、良ければそこに座って少し話が出来ないだろうか?」
少し躊躇してから私は騎士団長様に促されながら腰を下ろした。それを見た騎士団長様がゆっくりと口角を上げた。騎士団長様のその優しい表情に胸がドキドキと高鳴るのを感じる。
「君の名前を聞いてもいいだろうか?」
「…………」
「君はこの辺に住んでいるのか?」
「…………」
「その……妹がいたりするだろうか?」
「…………」
何も答えない私に騎士団長様はいろいろな質問をしてきた。それでも私は何も答えずに俯いていた。そんな失礼な態度の私に対し、申し訳なさそうに騎士団長様は眉を寄せた。