「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

「その魔獣はきみに危害を加えないのか?」

「大丈夫です。この子は私の友達ですから」

「そうか。それなら良かった」

 表情を緩めた騎士団長様が、そう言いながら剣を鞘に収めるのを見て、私は胸を撫で下ろした。

「ところで君はここで何をしていたんだ?」

「あっ……私はいつもここで体を清めているんです」

「ではこれから?」

「いえ、もう終わって帰るところです」

 私がそう言うと騎士団長様は少し考え込んでから、近くにある平らな岩に視線を移した。

「もし、良ければそこに座って少し話が出来ないだろうか?」

 少し躊躇してから私は騎士団長様に促されながら腰を下ろした。それを見た騎士団長様がゆっくりと口角を上げた。騎士団長様のその優しい表情に胸がドキドキと高鳴るのを感じる。

「君の名前を聞いてもいいだろうか?」

「…………」

「君はこの辺に住んでいるのか?」

「…………」

「その……妹がいたりするだろうか?」

「…………」

 何も答えない私に騎士団長様はいろいろな質問をしてきた。それでも私は何も答えずに俯いていた。そんな失礼な態度の私に対し、申し訳なさそうに騎士団長様は眉を寄せた。


< 78 / 152 >

この作品をシェア

pagetop