「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

「俺と話すのは嫌か?帰るところだっただろうに、引き留めてしまい申し訳ない」

 そう言い立ち上がろうとする騎士団長様の袖を、私は無意識に掴んでいた。

 しまった……そのまま何も話さずに帰ってもらった方が絶対に良かったはずだ。自分が魔王だと気づかれたら大変なことになるというのに、私は騎士団長様を引き留めていた。

 もう少しだけ……もう少しだけで良いからその声を聞いていたいと思ってしまった。この人の近くにいたいと、そう思ってしまった。そんな私の矛盾した思いを知ってか知らずか、騎士団長様は再び岩に腰を下ろしてくれた。

「どうしたんだ?俺に何か話したいことでもあるのか?」

 そう言うわけではない。むしろ早く離れなければいけない人だ。ゆっくりと仲良く話をしていい人じゃない。分っているのに、それが出来ない。悲しくも無いのに涙が出そうになった。私はこの人と離れたくないと思っている。

「…………」

 何も言わない私を見て、騎士団長様は気を悪くされるのではと思ったが、そんな様子もなく、たわいもない話を始めてくれた。騎士団長様だけがしゃべり、私はただその話を聞く。何もしゃべらない私を騎士団長様は見ているだけだったが、何も言わなかった。そんな時間がどれほど過ぎただろうか?騎士団長様の話を微笑みながら聞いていたところで、リトが「きゅん」と声を上げた。


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