「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 その美しい少女の近くに大きな魔獣がいることに気づき、剣の柄に手を添えた。その時、魔獣がこちらに気づき、うなり声をあげてきた。

 まずい、少女は大丈夫だろうかとそちらに視線を向けると、少女と視線がぶつかった。

 それだけで体がドクンッと何かに弾かれたような衝撃を受けた。

 そして静寂。

 それは一瞬のことだった。まるで時間が止まったかのような静寂の中で、二人だけがそこに存在しているかのような、そんな感覚だった。俺は目を見開いたまま、一瞬思考が停止した。目の前の少女から目が離せず、高揚感で体が震えた。

 そこで我に返る。

 目の前の魔獣をどうにかしなければ、俺は剣を手に魔獣と対峙すると少女が叫んだ。

「リト、やめなさい。大丈夫だから」

 少女がそう言いながら魔獣を撫でると、魔獣は大きな体に反して「きゅん」と可愛らしい声で鳴いた。少女に撫でられながら目を細める魔獣を見て、俺は抜いていた剣を鞘に収めた。

 聞けばこの魔獣は少女の友達なのだという。リトと呼ばれている魔獣を傷つけなくて良かったと胸を撫で下ろした。それから少し話がしたくて、少女に「話をしたい」と声を掛けると隣に座ってくれた。それから俺は少女にいろいろと質問をした。しかし、少女が俺の問いに答えることは無かった。せめて名前だけでも聞きたかったが、少女は口を開かなかった。

 それにしてもジェシーに似ている。ジェシーが成長したら、目の前の少女のように美しく成長するに違いない。ジェシーには姉がいると言っていた。

 もしかしたら……。


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