「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
そう思い、ジェシーの姉なのかと聞いてみたが、少女が答えることは無かった。違ったか……そう思いながら少女の顔を見て、ドクンッと心臓が跳ねた。
少女は眉を寄せ、目に涙をためていた。
どうしてそんな表情を?
俺は慌てながら話を逸らした。それからは少女に関しての話ではなく、俺のことを話した。すると、少女はホッとしたように表情を緩めてくれた。
良かった。
それから俺は数日おきに洞窟に通った。
平らな岩に腰を下ろし、ここ数日で起こった何でもないことを話した。少女は俺の話を楽しそうに聞いてくれた。時々声を出して笑ってくれるのを愛おしく見つめ、俺の頬も緩んだ。
あんなにジェシーに会いたいと思っていたのに、今はジェシカのことで頭がいっぱいな自分がいた。それがどうにもやるせなかった。別に浮気をしているわけではないのに、罪悪感に苛まれる。自分が誠実さのかけらもない薄情で最低な人間になった気分になり、頭を抱える日々が続いた。そんな自分を癒してくれたのは洞窟の少女だった。
「あれー?そういえば最近、団長ってばジェシーちゃんの話をしないっすね?」
「…………」
レンにそう言われ、俺はギクッと肩を震わせた。
「え?まさか隠れて会っているとかないっすよね?」
「それは無い」
「ふーん。じゃあ、諦めたっすか?」
「…………」
諦めたわけではない。
諦めたわけではないけど……。