「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
何も言わない俺に、今度はルノアが声を掛けて来た。
「まさか、ジェシー嬢の他に気になる人でもいるのですか?」
鋭い……。
ルノアは相手をよく観察し、その変化にいち早く気づくことが出来る人間だ。その観察眼には舌を巻くことがよくある。仲間のフォローもしつつ、俺の面倒まで見てくれる。仕事のできる人間だ。騎士団長に相応しいのは俺なんかよりルノアの方だろう。
ルノアが人を良く見ているとは思っていたが、今回ばかりはやめてほしいと思った。とりあえず今は俺のことなど放っておいてほしい。話を逸らそうとしたが、ルノアが先に核心をついてきた。
「気になる人がいるのですね?」
「…………」
何も言わないのは肯定だと言わんばかりに、ルノアが溜息をついた。
「あなたはいつからそんなに惚れっぽくなったのですか?今まで女性に対してそんな風になったことはなかったでしょう。それなのにどうされたのですか?」
信じられないとばかりに、ルノアが大きなため息をついてきた。
不誠実と言われればそれまでだ。
あの子がいい、この子がいいと、ふらふらとする自分は最低だと確かに思う。