「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 *

 ジェシカが眠りに着こうとしていた時だった。森の奥から大きな爆音が聞こえて来た。

「何?なんの音?」

 初めて聞く地面を揺さぶるような大きな音に、ジェシカは眉を顰めた。

 森の奥で何かが起きている。

 ジェシカは服を着ると、リトの背中に飛び乗った。

「リト、お願い!」

 その言葉だけでジェシカの意図を汲んだリトは、ジェシカを背中に乗せると走り出した。物凄い速さで森を駆け抜けるリトに振り落とされないように、ジェシカはリトにしがみついた。爆音に驚いた動物たちが、私たちの横を走り抜けていく。星の輝く夜空に、煙のような砂埃が立っている。この先が爆音の発生場所なのだろう。

「リト!」

 私はリトに声をかけ、ゆっくりと歩く様に指示を出した。

 いったい何が起こっているのだろう。

 魔王の力を使い、自分を中心にサーチ(検索)の魔法を使用する。すると自分以外の対象物を確認することが出来た。ここから1キロ圏内に大きな魔獣が一匹と、5人ほどの人間がいることがわかる。先ほどの爆音の正体はこの魔獣のせいなのだろう。しかし、その周りにいる人間に動く気配がない。

 魔獣と一定の距離をとって何がしたいのだろうか?

 意図がつかめず、ジェシカは戸惑った。

 とりあえず行ってみるしかないか。


< 87 / 152 >

この作品をシェア

pagetop