「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
サーチの魔法を施行したまま、ジェシカは魔獣のいる場所へと近づいて行く。そして目にしたのは、年若い冒険者たちの姿だった。魔獣にやられたのか、血を流してぐったりとしている。どうやら動かないのではなく、動けないのだということがわかった。冒険者たちは、生きることを諦めたかのように、うつろな目をしながら魔獣を見つめている。そんな冒険者たちに向かって、魔獣が大きな咆哮を上げた。
それは空気を震わせ、人を絶望の淵へと追いやるような悪魔の叫び声だった。
冒険者たちは逃げることも出来ず、その声を聞きながら落涙し、魔獣を見つめていた。
冒険者たちは絶望しながら覚悟をしているようだった。
自分たちの最後の時を……。
冒険者達が覚悟を決めたその時、そこに颯爽と現れたのは一匹の大きな魔獣と少女だった。
ジェシカとリトはその絶望と思われる場所に立っていた。
冒険者を背に、魔獣と対峙する。
「リト、いける?」
ジェシカの声に答えるようにリトが頷いた。それを見たジェシカは、祈るように手を組み合わせてリトに声を掛けた。
「リト、お願い。みんなを守って」
するとリトは魔獣に向かって飛び掛かっていく。
いつもは可愛らしく鳴くリトが、低いうなり声を上げながら魔獣に飛びつき、歯をむき出しにしている。そんなリトに向かって魔獣の鋭い爪が、リトの右わき腹に食い込んだ。「キャンッ」と悲鳴のような声を上げながら、リトが地面に叩きつけられた。
「リト!」