「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい

 ジェシカはリトに向かって駆け出し、魔獣の前に立った。ジェシカが魔王の力を使えば目の前にいる魔獣など、一瞬で消し去ることは可能だ。しかし、ここには冒険者たちがいる。魔獣をたやすく消し去るジェシカを見てどう思うだろうか……魔王だとばれてしまったら?

 ジェシカはぐっと唇を噛みしめた。

 ばれる可能性がある……それでも仕方がない。

 ここにいる皆を守るには力を使うしかない。

 ジェシカはゆっくりと右手を前に差し出し、力を込めようとした……その時。

 ズッドーン!

 地面が揺れ、砂ぼこりが上がった。

 目を開けていることが出来ずに、右腕で目をかばうようにして砂ぼこりが霧散するのを待つ。すると消えていく砂煙の向こうに、人の姿を確認した。

 あれは……あの人は……。

 騎士団長様?

 騎士団長様であろう人物は、大剣を手に魔獣に向かって振り上げると、一気に振り下ろした。すると魔獣の首と胴体が簡単に切り離された。魔獣も一瞬すぎて何が起こったのか分かっていないのだろう。獰猛な大きな口を開いたまま、叫び声を上げることもなく、その死骸は地面に転がった。

 瞬きをするほどの一瞬の出来事に、息を呑むことさえ出来ずに固まっていると、騎士団長様だと思われる人物が、ずんずんと大股でこちらにやって来た。

 やはり騎士団長様だ。


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