「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「良かった。完全に治癒出来たみたいですね」
そう言ってにっこりと笑って見せると、私を見ていた全員が顔を赤くさせた。
あれ?
どうしたんだろう?
首をかしげる私を隠すように、騎士団長様がいきなり私を腕の中に隠した。
「お前たちは見るな」
ん?
どういうこと?
私が魔王だとばれた?
でも、そういう感じはしない。
むしろ私を守ろうとしてくれている?
「あの?騎士団長様?」
騎士団長様の腕の中で、もがきながら上を見ると、すぐ近くに騎士団長様の整った顔があった。騎士団長様が顔を動かせば唇が触れてしまうような近さに、私の心臓が大きく跳ねた。
それと同時に抱きしめている騎士団長様の胸も、ドキドキと音が聞こえそうなほど動いているのが伝わってくる。それを肌で感じて恥ずかしさが込み上げてきた。それは熱となって顔が熱くさせる。
私は今、真っ赤な顔をしていると思う。
するとそれを見ていたレン様が笑った。
「団長もジェシカちゃんも真っ赤っすね」
他人に指摘されると、余計に恥ずかしい。私は騎士団長様の腕の中に隠れるように顔を伏せると、騎士団長様が腕に力を込めて抱きしめてくれた。それが何だか嬉しくて、くすぐったい気持ちになる。
そんな私たちを見て、レン様が叫んだ。
「騎士団長たちがイチャついてる!ずるい!」
「きゃー!イチャついてないです!レン様のバカ!」
私が慌ててそう言うと、騎士団長様が小刻みに震え出した。どうやら笑うのを我慢しているようだ。
「騎士団長様、笑っていますか?」
そう言うと、騎士団長様が少しだけ腕の力を緩めながらこちらを見た。
「ジェシカ、俺の名前は騎士団長様ではない。ジュウドだ」
「ジュウド……様?」
「様もいらないのだが、今後は名前で呼んでくれ」
「……分かりました」
私は心の中でジュウド様の名前を何度も呼んで、その名前を脳に刻み込んだ。