「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「リト、もう少し奥へ」
リトに念話で指示を出すとリトが移動を開始した。森の奥へと警戒しながら進むリトの視線は低く、地面を這うようにして進んで行く。少しすると、リトの動きが止まった。周囲を探るように左右に動く視線が止まると、全身黒い服の人間が数人、やはり何かを探すように歩き回っていた。
黒服の人間たちをよく見ると、服は黒いが聖教会の白服を黒に変えただけのような装いをしていた。
あれは聖教会の人?
服の色こそ違うが、首には聖教会と同じ十字のネックレスをしている。
それとも聖教会とは違う組織なのだろうか?
今度は耳に意識を集中させて音を拾っていく。
すると黒服の男たちの声が聞こえて来た。
「本当にあるんだろうな?」
「ああ、リコリスの花が見つかったんだ。必ずこの辺りにあるはずだ」
リコリスの花?
洞窟に咲いていたあの花?
それは少し前に薬屋に売った花の名前だ。
確かに希少な花だとは思うけど、あんなに必死に探すほどの物なのだろうか?
男たちの声に耳を傾けていると、男たちは更に話を続けた。
「聖教会にリコリスの花が持ち込まれた。薬屋の店主が言うには洞窟にリコリスの花が咲いているらしい。リコリスの花は聖なる場所にしか生息しない。岩の洞窟なら、聖女の洞窟に違いないはずだ」
「リコリスの花を売ってきたのは誰なんだ?そいつに場所を聞けないのか?」
「店主も知らない人間だったらしい」
おばちゃん私の事を話さなかったんだ。
おばちゃんの機転に感謝しか無い。