毒を盛られた令嬢は、冷酷皇帝に溺愛される
第8章 森の奥の皇帝
翌朝、エリアナは銀狼と共に領地を歩いていた。
荒れ果てた土地。だが、エリアナの目には可能性が見える。
銀狼が、エリアナの隣を歩く。
エリアナは、土を手に取った。
指で揉み、匂いを嗅ぐ。
前世の知識が、頭の中で分析する。
土壌のpH、ミネラルのバランス、保水性。
「これは……」
エリアナは目を見開いた。
「この土壌は、希少薬草に最適だ」
銀狼が、小さく鳴く。
エリアナは立ち上がり、周囲を見回した。
この一帯。南向きの緩やかな斜面。日当たりが良く、水はけも適度。
薬草園に、最適な条件。
エリアナは、村へ戻った。
村人たちが、井戸の周りに集まっている。
エリアナが近づくと、皆が振り返る。
「皆さん、お話があります」
エリアナは、明るい声で言った。
「この領地に、薬草園を作ります」
村人たちが、顔を見合わせる。
老村長が、前に出た。
「薬草園?」
「はい。この土壌は、希少な薬草を育てるのに最適です。薬草を育て、売れば、村は豊かになります」
村人たちが、ざわめく。
「だが、薬草園など、作ったことがない」
一人の村人が言う。
エリアナは、微笑んだ。
「私が教えます。一緒に作りましょう」
老村長が、エリアナを見つめる。
「領主様が、自ら?」
「はい。私も、畑を耕します」
エリアナは、近くにあった鍬を手に取った。
村人たちが、驚いた表情。
「領主が、鍬を……?」
エリアナは、鍬を肩に担いで、領地の一角へ向かった。
村人たちが、その後をついてくる。
エリアナは、土を耕し始めた。
鍬を振り下ろす。土が掘り返される。
汗が、額に滲む。
だが、エリアナは止まらない。
一心不乱に、土を耕す。
村人たちが、その姿を見ている。
しばらくして、一人の若い男が前に出た。
「俺も、手伝います」
男は、鍬を手に取り、エリアナの隣で土を耕し始めた。
次々と、村人たちが加わる。
老村長も、杖を置いて鍬を取る。
「領主様が頑張っているんだ。わしらも、やらねばな」
村人たちが、笑顔で働き始めた。
エリアナは、その光景を見て微笑んだ。
少しずつ。
少しずつ、心が通じ合っている。
銀狼が、エリアナの隣で座っている。
まるで、見守っているかのように。
日が暮れる頃、土地の一角が耕されていた。
村人たちが、満足そうに汗を拭う。
「明日から、種を蒔きましょう」
エリアナは言った。
村人たちが、頷く。
「領主様、ありがとうございます」
老村長が、深く頭を下げた。
エリアナは、首を横に振った。
「いいえ。私こそ、皆さんに感謝します」
夜が訪れた。
エリアナは、領主館で休んでいた。
銀狼が、突然立ち上がった。
エリアナを見つめ、小さく鳴く。
「どうしたの?」
銀狼は、扉へ向かう。
そして、エリアナを振り返る。
「ついて来いと?」
銀狼が、頷くように鼻を鳴らす。
エリアナは、外套を羽織った。
銀狼の後をついて、森へ入る。
月明かりが、木々の間から差し込んでいる。
銀狼は、確かな足取りで森を進む。
エリアナは、その後を追う。
どれくらい歩いただろう。
森が、開けた。
小さな川が流れている。
その向こうに、質素な野営地。
テントが一つ。焚き火の跡。
そして、テントの中から、咳き込む声。
エリアナは、息を呑んだ。
「ここが……」
銀狼が、エリアナを見る。
エリアナは、そっと野営地に近づいた。
テントの入口に、男が立っている。
鎧を着た侍従。剣を腰に下げている。
エリアナの足音に、侍従が振り返った。
「誰だ!」
剣を抜く。
エリアナは、両手を上げた。
「私は、薬師です」
侍従が、警戒した目でエリアナを見る。
「薬師? こんな夜中に、何の用だ」
「皇帝陛下の病を、治しに来ました」
侍従の目が、見開かれた。
「貴様、何を知っている」
「陛下が黒死病に苦しんでいることを。そして、私がそれを治せることを」
侍従は、剣を構えたまま、テントの中を振り返った。
「陛下、薬師を名乗る女が」
テントの中から、低い声が響く。
「帰れ」
冷たい声。
だが、その声は弱々しい。
エリアナは、一歩前に出た。
「陛下、どうか私に治療をさせてください」
「帰れと言った」
侍従が、剣を突きつける。
「これ以上近づくな」
エリアナは、動かなかった。
テントの中を見つめる。
「陛下、私は必ず治せます。どうか、信じてください」
沈黙。
しばらくして、テントの中から声が聞こえた。
「見せてやれ」
侍従が、渋々剣を下ろす。
エリアナは、テントに近づいた。
中を覗く。
そこには、一人の男が横たわっていた。
黒い髪。鋭い目。だが、その顔色は青白く、汗まみれ。
カイザー。
冷酷皇帝。
だが今、その姿は痛々しい。
カイザーが、微かに目を開けた。
エリアナを見る。
「帰れ。俺は誰の助けもいらん」
冷たく、言い放つ。
だが、その声は震えている。
エリアナは、膝をついた。
「陛下、黒死病は治せます」
カイザーが、嘲笑した。
「医師が何人も匙を投げた。素人が何を言う」
「これは細菌感染です。抗生物質に似た薬草で治療できます」
カイザーの目が、エリアナを見つめる。
「戯言を……」
咳き込む。激しく。
体が、痙攣する。
侍従が、慌ててカイザーを支える。
エリアナは、手を伸ばした。
「陛下、どうか」
「触るな!」
カイザーが叫ぶ。
侍従が、エリアナを押し戻す。
「もう帰れ。陛下は、お前の助けを望んでいない」
エリアナは、立ち上がった。
「わかりました」
だが、エリアナは諦めない。
「ですが、私は必ず薬を作ります。陛下が望まなくても」
エリアナは、野営地を後にした。
銀狼が、その後をついてくる。
森を抜け、領主館へ戻る。
エリアナの目には、決意の光。
「必ず、治してみせる」
領主館に戻ると、エリアナは机に向かった。
薬草の瓶を並べる。乳鉢と乳棒。蒸留器。
前世の知識を、総動員する。
黒死病。ペスト菌。
抗生物質が必要。ペニシリン、ストレプトマイシン。
だが、この世界にはない。
ならば、薬草で代用する。
ウィローバーク。サリチル酸を含む。抗炎症作用。
エキナセア。免疫賦活作用。
ゴールデンシール。ベルベリンを含む。抗菌作用。
だが、これだけでは足りない。
もっと強力な抗菌作用が必要。
エリアナは、ノートをめくる。
前世の記憶を辿る。
「ペニシリンに近い成分……自然界に存在するのは……」
エリアナは、考え込む。
その時、銀狼が立ち上がった。
扉へ向かい、外へ出る。
「待って!」
エリアナが追いかけると、銀狼は森へ走っていった。
エリアナは、その後を追う。
銀狼は、森の奥深く、湿った場所へ向かった。
そこには、古い倒木。
銀狼が、その倒木の根元を掘り始める。
「何を……?」
エリアナが近づくと、銀狼が咥えて持ち上げたのは、特殊なキノコ。
白くて小さい。だが、独特の匂い。
エリアナの目が、見開かれた。
「これは……!」
ペニシリウム属のキノコ。
ペニシリンの原料。
「銀狼、どうしてこれを……」
銀狼が、エリアナを見つめる。
その目に、知性の光。
エリアナは、キノコを受け取った。
「ありがとう」
銀狼が、尾を振る。
エリアナは、領主館へ戻った。
机に向かい、キノコを観察する。
間違いない。
これがあれば、ペニシリンに近い薬が作れる。
エリアナは、徹夜で作業を始めた。
キノコを培養し、成分を抽出する。
他の薬草と組み合わせる。
試行錯誤。
失敗。
再挑戦。
朝日が、窓から差し込む頃。
エリアナの手に、一つの瓶があった。
淡い黄色の液体。
試作薬。
エリアナは、それを見つめた。
「これで……治せる」
確信が、胸に満ちる。
エリアナは、瓶を大切に包んだ。
そして、立ち上がる。
「今日、もう一度行く」
銀狼が、エリアナを見つめる。
エリアナは、微笑んだ。
「一緒に来て」
銀狼が、尾を振った。
荒れ果てた土地。だが、エリアナの目には可能性が見える。
銀狼が、エリアナの隣を歩く。
エリアナは、土を手に取った。
指で揉み、匂いを嗅ぐ。
前世の知識が、頭の中で分析する。
土壌のpH、ミネラルのバランス、保水性。
「これは……」
エリアナは目を見開いた。
「この土壌は、希少薬草に最適だ」
銀狼が、小さく鳴く。
エリアナは立ち上がり、周囲を見回した。
この一帯。南向きの緩やかな斜面。日当たりが良く、水はけも適度。
薬草園に、最適な条件。
エリアナは、村へ戻った。
村人たちが、井戸の周りに集まっている。
エリアナが近づくと、皆が振り返る。
「皆さん、お話があります」
エリアナは、明るい声で言った。
「この領地に、薬草園を作ります」
村人たちが、顔を見合わせる。
老村長が、前に出た。
「薬草園?」
「はい。この土壌は、希少な薬草を育てるのに最適です。薬草を育て、売れば、村は豊かになります」
村人たちが、ざわめく。
「だが、薬草園など、作ったことがない」
一人の村人が言う。
エリアナは、微笑んだ。
「私が教えます。一緒に作りましょう」
老村長が、エリアナを見つめる。
「領主様が、自ら?」
「はい。私も、畑を耕します」
エリアナは、近くにあった鍬を手に取った。
村人たちが、驚いた表情。
「領主が、鍬を……?」
エリアナは、鍬を肩に担いで、領地の一角へ向かった。
村人たちが、その後をついてくる。
エリアナは、土を耕し始めた。
鍬を振り下ろす。土が掘り返される。
汗が、額に滲む。
だが、エリアナは止まらない。
一心不乱に、土を耕す。
村人たちが、その姿を見ている。
しばらくして、一人の若い男が前に出た。
「俺も、手伝います」
男は、鍬を手に取り、エリアナの隣で土を耕し始めた。
次々と、村人たちが加わる。
老村長も、杖を置いて鍬を取る。
「領主様が頑張っているんだ。わしらも、やらねばな」
村人たちが、笑顔で働き始めた。
エリアナは、その光景を見て微笑んだ。
少しずつ。
少しずつ、心が通じ合っている。
銀狼が、エリアナの隣で座っている。
まるで、見守っているかのように。
日が暮れる頃、土地の一角が耕されていた。
村人たちが、満足そうに汗を拭う。
「明日から、種を蒔きましょう」
エリアナは言った。
村人たちが、頷く。
「領主様、ありがとうございます」
老村長が、深く頭を下げた。
エリアナは、首を横に振った。
「いいえ。私こそ、皆さんに感謝します」
夜が訪れた。
エリアナは、領主館で休んでいた。
銀狼が、突然立ち上がった。
エリアナを見つめ、小さく鳴く。
「どうしたの?」
銀狼は、扉へ向かう。
そして、エリアナを振り返る。
「ついて来いと?」
銀狼が、頷くように鼻を鳴らす。
エリアナは、外套を羽織った。
銀狼の後をついて、森へ入る。
月明かりが、木々の間から差し込んでいる。
銀狼は、確かな足取りで森を進む。
エリアナは、その後を追う。
どれくらい歩いただろう。
森が、開けた。
小さな川が流れている。
その向こうに、質素な野営地。
テントが一つ。焚き火の跡。
そして、テントの中から、咳き込む声。
エリアナは、息を呑んだ。
「ここが……」
銀狼が、エリアナを見る。
エリアナは、そっと野営地に近づいた。
テントの入口に、男が立っている。
鎧を着た侍従。剣を腰に下げている。
エリアナの足音に、侍従が振り返った。
「誰だ!」
剣を抜く。
エリアナは、両手を上げた。
「私は、薬師です」
侍従が、警戒した目でエリアナを見る。
「薬師? こんな夜中に、何の用だ」
「皇帝陛下の病を、治しに来ました」
侍従の目が、見開かれた。
「貴様、何を知っている」
「陛下が黒死病に苦しんでいることを。そして、私がそれを治せることを」
侍従は、剣を構えたまま、テントの中を振り返った。
「陛下、薬師を名乗る女が」
テントの中から、低い声が響く。
「帰れ」
冷たい声。
だが、その声は弱々しい。
エリアナは、一歩前に出た。
「陛下、どうか私に治療をさせてください」
「帰れと言った」
侍従が、剣を突きつける。
「これ以上近づくな」
エリアナは、動かなかった。
テントの中を見つめる。
「陛下、私は必ず治せます。どうか、信じてください」
沈黙。
しばらくして、テントの中から声が聞こえた。
「見せてやれ」
侍従が、渋々剣を下ろす。
エリアナは、テントに近づいた。
中を覗く。
そこには、一人の男が横たわっていた。
黒い髪。鋭い目。だが、その顔色は青白く、汗まみれ。
カイザー。
冷酷皇帝。
だが今、その姿は痛々しい。
カイザーが、微かに目を開けた。
エリアナを見る。
「帰れ。俺は誰の助けもいらん」
冷たく、言い放つ。
だが、その声は震えている。
エリアナは、膝をついた。
「陛下、黒死病は治せます」
カイザーが、嘲笑した。
「医師が何人も匙を投げた。素人が何を言う」
「これは細菌感染です。抗生物質に似た薬草で治療できます」
カイザーの目が、エリアナを見つめる。
「戯言を……」
咳き込む。激しく。
体が、痙攣する。
侍従が、慌ててカイザーを支える。
エリアナは、手を伸ばした。
「陛下、どうか」
「触るな!」
カイザーが叫ぶ。
侍従が、エリアナを押し戻す。
「もう帰れ。陛下は、お前の助けを望んでいない」
エリアナは、立ち上がった。
「わかりました」
だが、エリアナは諦めない。
「ですが、私は必ず薬を作ります。陛下が望まなくても」
エリアナは、野営地を後にした。
銀狼が、その後をついてくる。
森を抜け、領主館へ戻る。
エリアナの目には、決意の光。
「必ず、治してみせる」
領主館に戻ると、エリアナは机に向かった。
薬草の瓶を並べる。乳鉢と乳棒。蒸留器。
前世の知識を、総動員する。
黒死病。ペスト菌。
抗生物質が必要。ペニシリン、ストレプトマイシン。
だが、この世界にはない。
ならば、薬草で代用する。
ウィローバーク。サリチル酸を含む。抗炎症作用。
エキナセア。免疫賦活作用。
ゴールデンシール。ベルベリンを含む。抗菌作用。
だが、これだけでは足りない。
もっと強力な抗菌作用が必要。
エリアナは、ノートをめくる。
前世の記憶を辿る。
「ペニシリンに近い成分……自然界に存在するのは……」
エリアナは、考え込む。
その時、銀狼が立ち上がった。
扉へ向かい、外へ出る。
「待って!」
エリアナが追いかけると、銀狼は森へ走っていった。
エリアナは、その後を追う。
銀狼は、森の奥深く、湿った場所へ向かった。
そこには、古い倒木。
銀狼が、その倒木の根元を掘り始める。
「何を……?」
エリアナが近づくと、銀狼が咥えて持ち上げたのは、特殊なキノコ。
白くて小さい。だが、独特の匂い。
エリアナの目が、見開かれた。
「これは……!」
ペニシリウム属のキノコ。
ペニシリンの原料。
「銀狼、どうしてこれを……」
銀狼が、エリアナを見つめる。
その目に、知性の光。
エリアナは、キノコを受け取った。
「ありがとう」
銀狼が、尾を振る。
エリアナは、領主館へ戻った。
机に向かい、キノコを観察する。
間違いない。
これがあれば、ペニシリンに近い薬が作れる。
エリアナは、徹夜で作業を始めた。
キノコを培養し、成分を抽出する。
他の薬草と組み合わせる。
試行錯誤。
失敗。
再挑戦。
朝日が、窓から差し込む頃。
エリアナの手に、一つの瓶があった。
淡い黄色の液体。
試作薬。
エリアナは、それを見つめた。
「これで……治せる」
確信が、胸に満ちる。
エリアナは、瓶を大切に包んだ。
そして、立ち上がる。
「今日、もう一度行く」
銀狼が、エリアナを見つめる。
エリアナは、微笑んだ。
「一緒に来て」
銀狼が、尾を振った。