シトラスの魔法が解けるまで

シトラスへの振り返り

部屋の明かりを消して、ベッドの上でスマホのバックライトだけが私の顔を照らしている。
図書室を出てから数時間。まだ、耳の奥には彼の「嫌ってねーよ」という低い声が残っている。
​「……よかった。本当に、よかった」
​暗闇の中で、独り言がこぼれた。
鼻の奥には、涙で少しツンとした後、彼と同じ空間にいたことで混ざり合った、甘いシトラスの香りがまだ残っている気がする。
私は震える指で『野いちご』の更新画面を開いた。
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