シトラスの魔法が解けるまで
シトラスの空白
「……それが、最後」
私の声は、冬の夜の公園に小さく溶けていった。
話し終えると、急に指先が冷たくなっていることに気づく。あの日の冷たい風が、今もここで吹いているみたいに。
隣に座る冴は、しばらく何も言わなかった。
「バシッ!」と私を叩いたさっきの勢いはどこにもなくて、ただ、夜の闇を見つめている。
「……そっか。それが中一の冬」
冴が静かに口を開いた。
「でもさ、莉奈。それから一年以上経ってるじゃん。中二の時だって、謝るチャンスなんていくらでもあったでしょ? なんで、今さら『魔法が解けない』なんて言うくらい、気まずいままなの?」
冴の言葉が、チクりと胸に刺さる。
そうだよね。たった一度の喧嘩。中学生によくある、ちょっとしたすれ違い。
普通なら、次の日に「昨日はごめん!」って言えば済む話だったはずなのに。
「……謝ろうとしたよ。何度も、何度も」
でも、できなかった。
あの日、彼が去り際に放った「お前に関係ないだろ」という言葉と、あの氷のような視線。それが呪いみたいに私を縛り付けてしまった。
それに、追い打ちをかけるような「事件」が、翌日の教室で待っていたから。
「……次の日の朝、学校に行ったの。そこで、見ちゃったんだ」
私はまた、ゆっくりと目を閉じた。
記憶の底、あの日の教室の光景が、シトラスの香りと共に鮮明に蘇ってくる。
私の声は、冬の夜の公園に小さく溶けていった。
話し終えると、急に指先が冷たくなっていることに気づく。あの日の冷たい風が、今もここで吹いているみたいに。
隣に座る冴は、しばらく何も言わなかった。
「バシッ!」と私を叩いたさっきの勢いはどこにもなくて、ただ、夜の闇を見つめている。
「……そっか。それが中一の冬」
冴が静かに口を開いた。
「でもさ、莉奈。それから一年以上経ってるじゃん。中二の時だって、謝るチャンスなんていくらでもあったでしょ? なんで、今さら『魔法が解けない』なんて言うくらい、気まずいままなの?」
冴の言葉が、チクりと胸に刺さる。
そうだよね。たった一度の喧嘩。中学生によくある、ちょっとしたすれ違い。
普通なら、次の日に「昨日はごめん!」って言えば済む話だったはずなのに。
「……謝ろうとしたよ。何度も、何度も」
でも、できなかった。
あの日、彼が去り際に放った「お前に関係ないだろ」という言葉と、あの氷のような視線。それが呪いみたいに私を縛り付けてしまった。
それに、追い打ちをかけるような「事件」が、翌日の教室で待っていたから。
「……次の日の朝、学校に行ったの。そこで、見ちゃったんだ」
私はまた、ゆっくりと目を閉じた。
記憶の底、あの日の教室の光景が、シトラスの香りと共に鮮明に蘇ってくる。