私の体にメスを入れて
『代金は支払ってある。また頼む』

たったそれだけ。冷たい言葉。それでも、メモが置いてあることを嬉しく思う自分がいる。

「朝までいてくれたらいいのに……」

叶うことのない願いを呟く。昨日の夜のことを思い出し、メモにゆっくりと唇を落とす。そして、仕事に行くためにバスルームへと向かった。



私の仕事は監察医だ。監察医とは、事件性があると判断された遺体や不審死を遂げた遺体を解剖すること。今日も手術室で、冷たくなった遺体にメスを入れる。

「肋骨外します」

「右心血液量はーーー」

今日も警察から依頼された遺体を解剖した。警察官を見送った後、私はデスクに突っ伏する。同寮がチョコレートを渡してきた。

「お疲れ。糖分補給しな」

「ありがと」

チョコレートを食べながらさっきの遺体を思い返す。若い女性の遺体だった。私と歳が変わらない。そんな女性が命を落とし、冷たい手術台の上で体にメスを入れられていく。

(私も今死んだら手術台の上で解剖されるのかな)
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