日向家の諸事情ですが。
「なにこれすっごい熱い…!シキ兄っ、熱あるって!」
「なんでもいいから冷やすもの持ってこい楓。……昼間湖に落ちたときから我慢してたな、こいつ」
「え…?でもそんな様子……」
はあはあと、呼吸が重い。
目は潤むし、身体中が熱いのなんのって。
「へーき……、へー、き、」
でもね、こんなの熱のうちに入らないんだよ。
「よんじゅう、ど……、なかったら…、平熱、だから……」
「は?馬鹿かおまえは。37.5度超えたら熱なんだよ」
「……バカか、おまえは…、そんなの…聞いたこと…ない、ぞ……、お母さんにいつも……言われてた、から……わたしが…、正解、……へへ、やったね…」
「…………」
小さい頃からずっと。
熱は40度を超えてから熱なんだって。
それ以外はどんなに苦しくても平熱。
だからわたしは38度でも39度でも、小さい頃から自力で治してきた。
お母さんはそう言っていたから。
母親の教えは、絶対だから。
「なに…、ユートーセーってそういうこと…?」
「…とんだ虐待じゃねえかよ」
わからないよアニキと楓くん。
どうしてそんな顔をしているの───。