日向家の諸事情ですが。




「……きょっ、今日もがんばってっ」



あれっ…?
わたし、なに言ってんだろ…。


今日もビシッとお堅いジャケット姿。

いつの間にかヘアセットも終えていて、清潔感は十分なくらいに。


さすがは大手金融を経営する日向家の長男だなあ……って思っていたら、ついこんなエールを送ってしまった。



「く、くだ…さい!」



振り返られると、どこか緊張してしまう。


お医者さんをすぐに呼んでくれてありがとう。
看病してくれてありがとう。

ずっと汗を拭いてくれて、ありがとう。


本当に伝えたいことがなぜ言葉にならないんだわたしっ!!



「…今更しおらしくなってどーした」


「えっ、いやっ、だってっ」


「脚立から落ちんなよ」


「へ…?キャタツ…?」


「照明。取り換えるんだろ」



そう言って、スタスタと去っていってしまった。

見えなくなるまで見送ったわたしの胸に、初めての温かさが残る。


トクン、とくん、トクン。


………ドクドクドクドコドコドコ!!!



< 31 / 78 >

この作品をシェア

pagetop