初恋の相手と運命の再会を果たしたら、イケメン社長になっていて溺愛されています
彼から食事に誘われた。まさか誘われるなんて思ってもみなかった。
どうしよう…。相手は弊社の社長だ。社長の誘いを一般社員の私に断れるわけがない。誘いに応じるしかなかった。

「私でよければ…」

「美優がいいから、俺は誘ったんだよ」

気を遣ってそう言ってくれたのであろう。彼の優しさに甘えることにした。

「そう言って頂けて光栄です。本日はよろしくお願い致します」

「そんなに畏まらなくていいよ。俺と美優の仲だろう?」

そうは言われても、相手は社長だ。社員の私が軽口を叩いていいわけがない。

「それは…難しいです。申し訳ございません」

私が断ると、彼は悲しそうな表情を浮かべた。

「そうか。それはすまない…」

断ったことを後悔した。軽口くらい、昔馴染みとして引き受ければよかった。

「それじゃ美優、食事へ行こっか」

いつまでも外で立ち話をしているわけにはいかないので、そろそろご飯屋さんへ移動することにした。

「そうですね、そうしましょう」

「運転手を呼ぶから、ちょっと待ってて」

彼はそう言って、電話で運転手を呼んだ。
すると呼んで数分後に目の前に車が停車した。

「社長、お疲れ様です。お迎えに参りました」

「ありがとう。彼女も一緒に乗るから。ここに向かってくれ」

「承知致しました。どうぞ、お乗り下さい」

運転手の方が車から一旦下車し、私を載せるために車のドアを開けてくれた。

「失礼致します。ありがとうございます」

「いえいえ。ドアを閉めますね」

運転手さんは私が車に乗ると、車のドアを優しく閉めてくれた。
そしてそのまま彼が乗る方のドアも開けて、彼が乗るとドアを閉め、運転席に戻った。

「それでは目的地へ発車致します」

運転手さんが車のエンジンをかけ、車を発進させた。
発進してから車内は終始無言で。音楽やラジオもかかっていないので、とても静かだ。
どうして何も喋らないの?無言のこの空気が気まずくないのかな?
私はこの空気に耐えられず、居た堪れない気持ちになった。

それでも我慢した。途中で降ろしてくださいなんて、口が裂けても言えなかった。
相手は社長だ。社長相手にそんな勇気は持てず…。
せっかく恋焦がれていた彼と再会できて嬉しいはずなのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろうか。
こんな気持ちだからだろうか。目的地までの道のりがとても長く感じた。
こんなことなら彼と再会したくなかった。彼がいなかった頃に戻りたいなんて思ってしまった。
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