利害一致の同情婚 ~カタブツ航空自衛官は契約妻を溺愛する~
 そのまま空港内で食事を済ませて席を立つ。それから雅樹さんと別れて、奥まったところにあるレストルームへ向かった。

「雪乃さん」

 目的地の手前で声をかけられて、歩みを止める。声がした背後を振り返った。

「西崎、さん……」

 笑みを浮かべているのに、彼女を取り巻く仄暗い雰囲気にゾクリとする。
 顔を合わせるのは、以前住んでいたマンションの前で彼女が待ち構えていいたとき以来だ。

「ひどいじゃない、雪乃さん。雅樹と別れるって約束したのに、なにも言わずにいなくなっちゃうなんて」

 そんな約束はした覚えがない。私はただ、彼の気持ちを知るために話をすると言っただけだ。

「捜すのに、ずいぶん苦労したのよ。雅樹って案外、照れ屋で嫉妬深いところがあるから、私が見つけてくれるか試したのね」

 怖い。
 彼女の中で、事実が都合のいいようにゆがめられていく。

 当然のように話しているが、この人と雅樹さんに交際の事実はいっさいないことはもう知っている。

「それで、いい加減に雅樹と別れる気になったわよね?」

 正直に話して、西崎さんを刺激するのはとにかく危険だ。穏便に済ませるためにも、人の多い場所へ移動したいところ。
 でも鬼気迫る様子で近づいてくる彼女につい後ずさり、ますます目に着きにくい隅に追いやられていく。

「いい加減、雅樹を返してくれないかしら」

「そ、れは……」

「あなたの意見なんて聞いていないの。私と雅樹は想い合っているんだから、さっさと別れてくれればいいのよ」

 耳を貸す気はまったくないようで、彼女の顔から笑みが消える。
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