欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる

「……俺さ、8才年の離れた弟がいるんだけどな、今大学生で僧侶を目指せる仏教学部がある大学に通ってるんだよ」

「弟さんがお寺を継ぐの?」

「弟もやりたいことはあったかもしれないが……俺が25才の時かな、親父が倒れたって連絡が入って1度1週間くらい家に帰ってたんだよ、その時に知らない人が寺にいてさ…母親に聞いたら親父の代わりに日程が決まっていた法事を手伝いに来てくれていた人でさ、当たり前に僧侶を務めていた親父がいないのが変な感情になってしまって、俺か弟が後を継がないとお寺から出ないといけなくなるって事をその時に知ったんだ」

「えっ、そうなの?」

「そうらしくて調べた(笑)お寺って宗教法人に属されていて住職一家の私有財産ではないらしい」

そうなんだと梨花子は幸成の話を聞いている。

「親父は好きな仕事をしてもいいって言ったけど弟は俺よりも先にそれを理解していて大学を選んだ、幸いなことに親父は1ヶ月で復職したけど何か記事で読んだんだよな、なぜ僧侶になるのか?だってそこに生まれたから…でもそれも大きなご縁で、そういうご縁をしがらみと受け取るかつながりと受け取るかは自分次第だって」

そういうと幸成は梨花子の方を向き、2人は目が合った。

「今、笹本とこうやって出かけてる事もご縁だと俺は思ってる…10年経って会社も軌道に乗ってきて地元に帰ってきて笹本がまだ独身だったら……結婚したいと思ってた」

「…えっ、」

「結婚を前提に付き合って欲しいんだ」

「ご縁か…」

そう呟くと梨花子は幸成から視線をそらしグラウンドを見つめた。

天気は良かったが秋の風が少しだけ冷たく感じ梨花子は一瞬ブルッと震えると、幸成は自分が着ていた上着を梨花子の肩にかけた。

Gジャンは車置いてきてしまっていたのだ。

「あ、ありがとう」

優しい……

「考える時間が、欲しい?」

幸成は優しく聞いてくれた。

梨花子は首を横に振ると

「つまらない女かも知れないけどよろしくお願いいたします」

幸成の方に向いて座り直し、頭を下げた。

「マジ?超嬉しいんだけど」

幸成は梨花子の手を軽く握った。

「冷えてる…温めさせて」

そういうと上着の上から軽くハグをされた。

「は、恥ずかしい…」

「マジで嬉しいから」

「仙道くんの事を信じていいの?」

「何でさ、俺はさ、真面目だって言っただろ」

「私…恋愛が怖いの…」

幸成の胸の中で梨花子は正直に言った。

「楽しいって思わせてみせる!」

「本当に?」

「あぁ、1つだけ言っとく…俺めっちゃ笹本に甘えるよ(笑)」
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