欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる
しばらくすると部屋の鍵が開き、幸成が入ってきた。
「悪い、待った?」
「あっ、おかえり」
その場で幸成は固まった。
「えっ、梨花子、大人っぽいな」
「もう大人ですけど?」
カーキ色のニットワンピースに黒タイツにショートブーツに着替えていた。
髪もいつもは束ねているのだが幸成の電話の間にアイロンをかけたようで巻き髪になっていた。
「やっぱり美人だ」
「そんな…夜だから少しだけね、おかしくないかな、田舎の女ってバレる?(笑)」
「全くだよ」
幸成はソファに置いていたコートを着て、二人で部屋を出た。
「昨日久しぶりに飲みすぎて昼過ぎまで起きれなかった(笑)」
「朝方まで呑んだの?」
「あぁ、5時だった」
「今日も呑むの辛くない?」
「大丈夫、今日はそんなに呑まない」
20分ほど歩くと1軒のBARに入った。
お客さんに手を軽く振っている幸成は顔見知りなんだろう。
「久しぶりだね、マスター」
幸成はカウンター席に座った。
「そりゃ東京から離れたら来れねぇよな」
「まあな、紹介するな、俺の婚約者」
「初めまして」
梨花子は頭を下げて幸成の隣に座った。
「婚約者?幸成の?」
「はい」
「幸成結婚すんの?」
近くで呑んでいた人達も寄ってきた。
「いつ?」
「まだ全然決まってないけど結婚を前提に付き合ってる」
「いや〜幸成はモテるからわかんねぇ」
「そうだな、彼女さん、幸成に飽きられないようにな」
「うるさいよ、あっち行け」と言うと梨花子の背中をポンポンと軽く叩いた。
「気にするな、酔ってるから」
「あっ、うん…」
確かに酔ってるけど幸成がモテるのは知ってるって事よね…
「あいつらは幸成が地元に帰ってさ、からかう相手がいなくて寂しいんだよ」
マスターも梨花子にそう言ってくれた。
「彼女にあまり強くないカクテルを」
「はいよ」
「梨花子、コートを預かるよ」
「ありがとう」
壁にハンガーがあり2人のコートを幸成はかけてくれた。
カクテルが梨花子の前に置かれ、幸成と乾杯をする。
「美味しい」
「少しずつ呑めよ、後で酔いはくる」
「わかった」
「お酒はあまり飲まないのかい?」
「はい、弱くて」
「ノンアルコールも出来るよ」
「次はお願いします…でもこれも美味しいです」
「幸成はショット?」
「テキーラと水」
「幸成は常連なの?」
梨花子は尋ねる。
「まあな、そんなに長時間はいないんだ、色んな店に顔を出す、まあ営業する時もある(笑)色んな業界の人と出会うからな、俺の服を気に入って買ってくれる人に出会う為だ」
「でも、それなら幸成の拠点は東京じゃないの?」