欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる
ユキちゃんを助けて!
ど、どうしよう……
梨花子は玄関でうずくまっていた。
私…何であんないい方しちゃったんだろう、さっきの態度は悪すぎた、絶対怒っている。
車は遠ざかって行ったし……
本当は食事に誘ってくれて嬉しかったはずなのに…
1度帰りたかったのも少しでも良く見せたくて地味な仕事着のまま仙道くんの横を歩くのは恥ずかしいと思い着替えたかったはずなのに…
田舎は普段見ない車にとても敏感だ。
すれ違うだけでもどこの誰とかわかるし、頭を下げたり、手を振ったり。
そして、近所の噂にもすぐになる。
梨花子は無意識に近所の噂になる事を考えてしまった。
ごめんね、仙道くん…
夜になり、寝る前にスマホを開いた。
“今日はごめんなさい“
ショートメールで送ったが返事は来なかった。
次の日の朝、いつも通りに散歩に行ったが、もしかして来てくれるかな…なんて少しの期待を持ちながらも仙道くんは来なかった。
2週間程経った週末の土曜日の事だった。
梨花子の父親は中学校の教師をしていて昨日から修学旅行に行っている。
そして母親も今日は1日仕事だった。
梨花子には弟がいるが、県外で今は就職している。
今日のお昼ご飯は何にしようかなと2階の自分の部屋から降りてキッチンに立っていた。
冷凍庫のご飯を解凍している間ユキちゃんに近寄るとユキちゃんはぐったり横になっていたのだ。
「ユキちゃん!」
び、病院…
いつもの病院は午前診療は1時までで、午後は3時からだった。
病院に電話をするとすぐに連れてきてくださいと言われ、梨花子は返事をした。
梨花子は急いで着替え、ユキちゃんをゆっくり犬用のキャリーバックに入れた。
あっ!
車がないんだ……
いつもはお母さんの車で検診は連れて行っていた。
どうしよう……
タクシーも近くにはタクシー会社はなく時間がかかってしまう。
梨花子は無意識に仙道くんの番号を押していた。
出て!お願い!早く……
中々出てくれなかったがずっと梨花子は鳴らし続けた。
着信拒否?
当然だよね…
タクシーしかないか…
電話を切ろうとしたとき
「もしもし」
仙道くんの声がした。
「せ、仙道くん!助けて!」
「えっ、どうした?」
「ユキちゃんが、ユキちゃんが…」
「ユキちゃんがどうした?」
「ぐったりしていて……病院に連れて行きたいけど今日に限って車が無くて…私の家まで来れないかな?図々しいのは承知の上なのはわかってるけど、お願い!!」
梨花子は一気に喋り泣き出していた。