欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる

「すぐ行くから出れるように準備しとけ、15分でぶっ飛ばして行く」

「捕まらないでよ」

「まかせとけ、じゃあ」

梨花子はスマホを持つ手が震えていた。

「しっかりしなきゃ…」

頬に伝っていた涙をティッシュで拭き、鼻を噛んだ。

ユキちゃん用のキャリーバックをしっかり抱え、玄関前で仙道くんを待つ。

しばらくすると前に聞いた低いエンジン音が聞こえてきた。

梨花子の家の庭で車を回し、梨花子は助手席に乗り込んだ。

「お願いします」

梨花子がシートベルトに手を伸ばしたが手が震えて付けることが出来ない。

「ご、ごめん、震えちゃって」

仙道くんは梨花子に近づきシートベルトを締めてくれたのだ。

「ありがとう」

「ん…島本動物病院でいいのか?」

「うん、お願いします」

仙道くんはブォンブォンとアクセルをふかすと急いで海岸沿いの道を走り抜けた。

島本動物病院は2人が通っていた高校の近くにあり、数少ない動物病院だ。

それでも車で20分はかかる。

電話を入れてた時に午前中診療時間過ぎるかもと話していたので少し時間は過ぎたが開けていてくれた。

駐車場に停めると急いで梨花子は中に入っていった。



しばらく車の中に居た幸成はハンドルに頭を置いていた。

「何だよ…やっぱり会うと忘れられねぇじゃん…」

あの日、家に戻ってからもこれからどう笹本に接すればいいのか考えていた。

車を買い換えれば上手くいくのか?

確かに笹本の言うこともわからなくはない。

現に今の俺の家の近所でも目立ってるし、母親からはもう少しエンジン音どうにかならないの?とか言われる始末。

車がないと不便な町なんだから8人乗りのでっかい車に変えてみんなが乗れるようにしたら?とか…


でもな、俺の夢だったんだよな、このスポーツカーに乗ってみたかったのは…

子供の頃のミニカーを誕生日に貰ってからかっこいいと思って、将来は乗ってみたいと子供ながらに思い、高校の時から投資を勉強して、大学に通いながらバイトも仕事も頑張って……

だから真面目な笹本は俺の事をチャラいしスポーツカーになんか乗ってイキってるのかと思われたのかもしれない。

まあ学生の時からチャラいと思われていたのはこの間まで知らなかったが…


でもきちんと俺の事をいつ話すべきか迷っている、もちろん友達のままなら話さないが、この先上手くいくなら話は必要だ。

幸成は車を降りて病院に入ると待合室では梨花子が震えながら座っていた。

笹本……
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