欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる
「お腹空いたな〜」
歩いていると牛丼屋さんを見つけて初めて梨花子は1人で店に入っていった。
梨花子は普段はお弁当で仕事が終わるとすぐに家に帰るため1人でお店で食べたことはなく、誰も梨花子の事を知らない東京で梨花子の度胸もついたのだった。
牛丼がくるまで店の中をキョロキョロして、運ばれるといただきますと手を合わせて牛丼を食べる。
「うん、美味しい」
小声で呟き、お腹が空いていたのであっという間に平らげた。
店を出て、ホテルに戻るとまだ幸成は帰っていなかった。
本当にどこに行ったんだろう…
少し昼寝もしているとドアの音で目が覚めた。
「幸成?」
「うん、悪いな遅くなった」
「はぁ…」
梨花子はドアの音でびっくりして起きたのでしばらく心臓を押さえて深呼吸をしていた。
「寝てた?」
「うん、起きていなくなってたからびっくりした」
「ちゃんと話す…けどちょっと寝させて欲しい、本当にごめん」
そう言うと幸成はベッドで寝てしまった。
なんで?どこに行ってたってのひと言が言えないの?
「はぁ…もう知らない」
梨花子はルームキーを持って部屋から出て行った。
基本喧嘩が嫌いな梨花子だが流石に文句を言ってしまいそうだったので1度幸成と距離を取ることで気分を落ち着かせた。
マップを見てブックカフェを見つけて1人で電車に乗ってみる。
ドキドキしながら切符を買い目的地に無事に到着したのだ。
たくさんの本が読めるカフェで本が大好きな梨花子は嬉しくなった。
地元にもあればいいのになぁ…
最近では電子書籍化で本屋がなくなっていく田舎の現状…
無になって梨花子は本を読んでいた。
辺りが真っ暗になっているのも気付かずに…
スマホの電源を落としていたのをすっかり忘れていて電源を入れるとたくさんの幸成からの着信がはいっていた。
カフェから出ると幸成に電話をかける。
ワンコールで幸成の声が聞こえるとどこだ!と聞こえ、思わずスマホを耳から外した。
「声が大きい…」
「どこだって聞いてる」
「えーと…六本木?」
「電車に乗ったのか?」
「うん」
「今、電気トラブルで動いてないから迎えに行く」
「え、そうなの?じゃあタクシー拾うよ」
「いや俺が行く、場所を送ってくれ」
「わかった…」
タクシーくらい拾えるのにな。
梨花子はカフェの前でしばらく待つとタクシーが停り幸成に呼ばれた。
お互い会話はなく、ホテルまで無言だった。
部屋の鍵を梨花子は開けて2人は部屋に入る。
「…迎えにきてくれてありがとう」
梨花子は気まずいながらもお礼を言った。