欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる
幸成はしばらく黙ってしまった。
「俺…前に話したように父さんが倒れた時に俺が寺を継がなきゃって思ったんだ、でも弟が継ぐって言ってからも弟だけじゃと思っていずれは僧侶にはなるつもりでいた」
梨花子は頷いた。
「僧侶だけじゃ生活出来ないから事業を始めようと思って戻ってきた、もちろん白木の事もあって距離も取りたかった、今は空き家をリノベーションして宿泊施設や実家の近くでBARを経営したいんだ」
「経営ね…」
「今外国人観光客が増えているのに宿泊施設は少ない状態だ、過疎化の進んでいる俺達の地域には空き家もたくさんある」
「1人で?」
「まあ今は1人だがまだ時間がかかる、その間に通信教育と週末東京の授業で僧侶の勉強しようと思っていたんだが…」
幸成は梨花子をじっと見つめた。
「梨花子と結婚したくなったんだ、市役所で偶然会ったのは空き家の管理が役所だったから話を聞きに行ったって訳」
「それで会ったのね」
「うん、そこから俺の欲望の暴走が始まった、梨花子と絶対に結婚したいって思いが強すぎてさ、俺、だいぶ浮かれてんな」
「…そこまで私と…」
梨花子は涙を流した。
「泣くことはない、俺の一方的な思いだ」
幸成はティッシュを梨花子に渡す。
「ありがとう…ごめんなさい、幸成の気持ちは嬉しかったのに偉そうに言っちゃった…私も努力する、幸成に離されないようについて行く……っ…うっ…」
「そこまで真面目にならなくてもいいんだよ」
「だって…私、真面目だもん…ふっ、ふふふっ」
「俺の煩悩がさ欲と戦ってんの、梨花子と結婚して子供も出来て、僧侶は子供が落ち着いたら修行するか、次の事業を始めるまでに修行をするか」
「それを相談に行ったの?」
「うん…だから結婚をやめるなんて考えないで欲しい、俺の煩悩の中の欲を梨花子にしっかり止めて欲しい…梨花子の言う事は全然きつくない、2人が幸せになる為に何度も話し合おう、喧嘩してもすぐに仲直りしよう…だから改めて俺と一緒になってください」
幸成は梨花子に小さな箱を渡した。
「開けて欲しい」
「これ…指輪、いつのまに?」
「忘年会で1日早く東京に来てただろ?その時に買った」
幸成は梨花子に近づき指輪を左手の薬指にはめた。
「ピッタリだね(笑)」
「前にショッピングモール行った時にサイズ測っただろ?」
「色んな指を確かに…えっ、憶えててくれたの?」
「もちろん(笑)」
「ありがとう…嬉しい」
梨花子は立ち上がり幸成に抱きついた。
「…ごめんね」と言うと幸成がキスをくれた。