欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる
幸成は梨花子の隣に座った。
「大丈夫だよ……きっと大丈夫」
「大丈夫じゃなかったら?…もう13歳なんだよ」
幸成は何も言えなくなった。
「……ごめん、私…この間からどうかしてる、車出してもらったのに本当ごめん」
梨花子は自分の手を合わせて顔の前に持ってきて目を瞑っていた。
「いや、まあ、車がないと不便なのはわかるしな」
しばらくすると梨花子は呼ばれ、診察室からバックを抱えて出てきた。
幸成は梨花子が会計をする為、バックを預かった。
「ありがとう」
2人は病院のスタッフにお礼を言って車に乗り込んだ。
「帰っていいか?」
梨花子は頷いた。
幸成は病院を出て梨花子の家に車を走らせた。
海岸線を走っていると幸成はハザードを付けて車を停めた。
「坂から上がれよ、また家に回ると目立つだろ」
幸成は梨花子がいつも散歩で降りてくる坂の前で停まったのだ。
「あ…本当に今日はありがとう、お礼をさせて欲しい」
「ん…飯…リベンジで行きたいけどしばらくはユキちゃんからなるべく目を離したくはないだろ?」
「うん」
「また落ち着いたら連絡くれよ、待ってる」
「それでいいの?タクシー代くらいのお金を払うよ」
「うーん、お金じゃねぇんだわ、ただこれから笹本と会わなかった10年を埋めたいんだよな」
「どういう事?」
「あー……多分今日言うことじゃねぇからまたの時に改めて言うわ」
「わかった、じゃあ、本当に今日はありがとう」
「ん、元気出せよ」
梨花子は助手席を降りて坂を登って帰って行った。
梨花子の姿が見えなくなるとエンジンをふかして海岸線を幸成はしばらく車を走らせた。
……それから半年後、ユキちゃんは老衰の為、天国に旅立ってしまった。
しばらくは梨花子も仕事にはなんとか行くが帰ってからは海に行き、しばらくぼーっとする日が続いた。
このままじゃいけないのはわかってはいるが…
もうすぐ秋祭りが行われる。
梨花子達の地域はお神輿のかきくらべがあり、他の地域と交流する行事がある。
土日で行なわれ、土曜の夜は各地域からお神輿が広いスーパーの駐車場に集まってくる。
梨花子は前日の金曜日の夜から毎年自分の地域の公民館で母親と料理の準備をしているのだ。
お祭りはみんなテンションも上がるし、田舎は人が少ないし高齢化しているので梨花子のような若い人はお手伝いをするのが風習だ。