嫌われ爺さんへの怨み節
志津子のそんな言葉に、

「え?母さんどこか悪いの?あそこ死人病院って呼ばれてるし、他の病院にしたほうがいいんじゃない」

「爺さんが運ばれたって言うから」

「ふーん」

全く気のない返事の美奈子。

爺さん、というのは学のことである。

美奈子には、15歳離れた、秋子という姉がいる。

長女の秋子は隣県在住で、既婚だが子供はいない。

つまり、学には孫など一人もいないのだが、家族からは密かに爺さんと呼ばれていた。

渋々、車のキーを取りに行く美奈子だが、彼女は、父親である学を心底嫌っていた。

物心ついた頃から、酒乱の学はいつ見ても酒に飲まれては家族に当たり散らしていた記憶しかないからだ。

さらに、数年前から美奈子は益々、学を嫌うようになった。

ドライな恋愛観が災いし、学生時代から、どの彼氏とも長続きしなかった美奈子だが、一度だけ、結婚したいと思った相手がいた。
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