あの夏、キミが描いた青空


途中で水たまりにハマったが、あの傘のおかげで何とか家に帰ってくることができた。



靴にかけた防水スプレーは、意味がなかった。



「大野は大丈夫なのかな?」



あたしに傘を貸して、自分はびしょ濡れ。



明日風邪で学校休むとかやめてよね。



あたしはびちゃびちゃになった靴下を洗面所にある洗濯機の中に放り投げ、タオルで足を拭いた。



「ただいまー」



洗面所から出ると、ちょうどお母さんが帰ってきた。



「おかえり」



お母さんも水たまりにハマったのだろうか。



靴下が濡れていて、床に足跡がついている。



「今日の晩御飯、何がいい?」



「うーん、カレーライスがいいな」



本当は今日の昼、食堂でカレーパンを買って食べたが、やっぱりお母さんの味には勝てなかった。



「そう言うと思って具材買ってきたの。にんじんの詰め放題やってたし、ちょうどよかった」



そう言って嬉しそうに、買い物袋からにんじんがパンパンに詰まった袋を取り出すお母さん。



袋の中には、太くて大きなにんじんが四本入っていた。



「しかも、これ全部で五十円だったの!流石に安すぎだよねー」



「嘘、これで五十円!?確かに安いね」



そんなスーパーもあるんだなー。



あたしはお母さんに新しいタオルを差し出した。



「お母さん、足拭かないと」



「そうね、ありがとう」



お母さんもあたしと同じように、靴下を洗濯機に入れた。



床に付いた足跡も拭き取って、タオルも洗濯機の中に。



「じゃ、カレー作るから紗英は早く課題終わらせなさい」



洗濯機を閉めたお母さんは、買い物袋を持ってキッチンに走って行った。



あー、そういえば今日も課題出てるんだった。



あたしは返事をして自分の部屋に入った。



「今日の課題は何だっけ」



あたしはカバンから『6月の課題一覧』を取り出した。



「えーっと今日は…」



数学のテキスト五ページだ。



あたしは早速カバンをあさって、筆箱とテキストを探した。



しかし、数学のテキストだけがなかった。



「うわっ、最悪…学校かな?」



今ならまだ明るいし、取りに行ける時間だ。



うちの学校は、教室に忘れ物をしても取りに行くのは禁止だ。



だけど、こればかりは仕方ないよね。



あたしはタンスから白い靴下を出して履いた。



そして傘を持ち、お母さんに何も言わずに黙って家を出た。



外は朝から一切変わらず土砂降りだ。



またこの雨の中を歩くのかと思うと、気が滅入った。
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