私のフルート、恋の音しか出なくなりました。

「やばい、本当に遅刻しちゃう……!」

春の柔らかな日差しの中を、私は必死に駆け抜けていた。

……といっても、もともと運動が苦手な私の全力疾走なんて、端から見れば早歩きに毛が生えたようなもの。

学年運動神経最下位なんだから仕方ないよね…

少しずつでも体力つけておけば、もっと楽だったかも。

体なまけさせすぎちゃったかな。

ごめんね、私の体。

うぅ…それにしても重すぎ!

胸に抱えたフルートケースが、走るリズムに合わせて重たく揺れる。

足も遅いしフルートも重いしで、もういっぱいいっぱいだよ…。

もし、あと十五分……いや、せめてあと十分だけでも早く、あの朝食の時間を切り上げていたら、今頃のんびりと…

わたしのバカ……!

朝、あんなにのんびりトーストを齧っていた自分を今すぐ殴り飛ばしたい!

そう心の中で叫んでも、過ぎ去った時間は一秒たりとも戻ってこないことは承知済み。

必死に足を動かすたびに、抱えたフルートケースが二の腕に食い込み、鈍い重みを伝えてくる。
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