私のフルート、恋の音しか出なくなりました。
そう自分に言い聞かせて、もつれそうになる足に必死に力を込めたその瞬間。

無情にも、チカチカと点滅していた青が消え、視界が真っ赤な光に染まってしまった。

……っ、嘘でしょ……!?

あと数メートル、ほんの数歩。

そのわずかな距離が、今の私には果てしなく遠い世界の境界線のように感じられる。

アスファルトに無理やりブレーキをかける私のすぐ目の前を、車が風を切って通り過ぎていく。

信号の向こう側では、校門がゆっくりと、その隙間を狭めているがわかる。

視界が、じわじわと熱い膜で覆われていく。

「……っ、うそ……なんで……っ」

あと数歩。本当に、あとほんの少しだったのに。

「……まって、お願い……っ」

喉の奥がヒリヒリと焼けて、鼻の奥がツンとする。

「……うう、ひっ……っ……」

しゃがみ込みそうになる足を、震える膝を、なんとか踏ん張らせる。

ああ、もう、ダメだ。遅刻しちゃった…完に、遅刻しちゃったんだ…

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