塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 幼い少女の微笑みと、向けられた言葉にレナルドは目を見開く。自分が騎士見習いであることを言い当てられた気がして、思わず胸がどきりと音を立てた。そんなレナルドに気づかない様子で、少女は小さく首をかしげた。

「あの、もしかして、本当に騎士様ですか?」

「いや……、違う。でも、見習いなんだ」

「わぁ! それなら将来の騎士様ですね! この本に出てくる、お姫様を守る騎士様がすっごく素敵なんです。さっき助けてくださった時、本当に本の中から出てきたのかと思っちゃいました」

 木の根元に置いてあった本を拾い上げると、少女は嬉しそうに見せてくれる。読んだことはないが、人気の恋物語であることは分かる。そんな立派な騎士と同じように扱ってもらえたことに、レナルドはくすぐったい気持ちになった。だが同時に、目標とする騎士には程遠い自分に小さなため息もついてしまう。

「……どうしたんですか?」

「でも、ちゃんとした騎士になれるか分からない。いつも失敗してばかりだし、俺は背も小さい。重たい剣を持つだけの力もまだないし、騎士になるための試験は、勉強も実技もすごく難しいんだ」

 初対面の少女に何を言っているんだと思いつつも、レナルドは自分の抱える不安を思わず吐露していた。

 幼い頃から騎士に憧れて、自分なりに努力をしてきた。好き嫌いせずになんでも食べたし、鍛錬だって欠かさない。勉強だって頑張っている。だが、同年代の子供に比べて、レナルドは小柄だった。同じ騎士見習いの子供たちにどんどん背を抜かされて、自分は本当に騎士になれるのだろうかと自信喪失中なのだ。

 少女はしばらくぱちぱちと目を瞬いていたが、やがて「そうだ!」と何かを思いついたように本を開いた。

「助けていただいたお礼に、これを差し上げます!」

「えっ?」
< 117 / 167 >

この作品をシェア

pagetop