塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
彼女の父親であるブラン男爵が部屋を出ていき、二人きりになったタイミングで、レナルドはこっそりとため息をついた。本当に彼女を手に入れたのだという喜びと、望まぬ結婚を押しつけた罪悪感で気持ちは落ち着かないままだ。
思わずこの結婚は形だけのものであると念押ししてしまい、傷ついたようなラシェルの表情を見て更に後悔する。だが愛していると伝えたところで、好きでもない相手からの好意なんて彼女にとっては不快でしかないだろう。
愛されたいなんて高望みはしない。ただ、そばにいてくれるだけでいいのだ。これから先、ラシェルの隣にいるのは自分だという事実だけで、レナルドは生きていける。
そんな時、ラシェルに名前を呼ばれて思わずびくりと肩を震わせてしまった。どうやら気づかれなかったようで、彼女は笑みを浮かべながら話し始める。艶やかな唇が紡いだその内容に、レナルドはもう一度身体を震わせた。
五年前、孤児院でレナルドと出会ったことを、ラシェルは覚えていてくれた。それだけでも嬉しかったのに、彼女はまた『困っている人を迷わず助けるなんてすごいと思った』と言ってくれたのだ。
最初に会った時にラシェルからもらったその言葉は、レナルドにとってその後の人生の指針となるほどに大切なものだ。それを再びかけてもらえるなんて、こんなに幸せなことはない。
だが、嬉しさのあまりに挙動不審になったレナルドは、そっけない返事を返してしまった。それを見たラシェルが、『やっぱり覚えていないですよね』と取り繕うように笑うのを見て心の底から後悔したが、うまい言葉が出てこず、結局何も言うことができなかった。
思わずこの結婚は形だけのものであると念押ししてしまい、傷ついたようなラシェルの表情を見て更に後悔する。だが愛していると伝えたところで、好きでもない相手からの好意なんて彼女にとっては不快でしかないだろう。
愛されたいなんて高望みはしない。ただ、そばにいてくれるだけでいいのだ。これから先、ラシェルの隣にいるのは自分だという事実だけで、レナルドは生きていける。
そんな時、ラシェルに名前を呼ばれて思わずびくりと肩を震わせてしまった。どうやら気づかれなかったようで、彼女は笑みを浮かべながら話し始める。艶やかな唇が紡いだその内容に、レナルドはもう一度身体を震わせた。
五年前、孤児院でレナルドと出会ったことを、ラシェルは覚えていてくれた。それだけでも嬉しかったのに、彼女はまた『困っている人を迷わず助けるなんてすごいと思った』と言ってくれたのだ。
最初に会った時にラシェルからもらったその言葉は、レナルドにとってその後の人生の指針となるほどに大切なものだ。それを再びかけてもらえるなんて、こんなに幸せなことはない。
だが、嬉しさのあまりに挙動不審になったレナルドは、そっけない返事を返してしまった。それを見たラシェルが、『やっぱり覚えていないですよね』と取り繕うように笑うのを見て心の底から後悔したが、うまい言葉が出てこず、結局何も言うことができなかった。