塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「いえ、用事というわけではないんですけど、最後にもう一度見て回りたいなと思って」
「そうか。それなら俺は馬車に戻っている。時間は気にせず、ゆっくりしてくるといい」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて、ラシェルは庭へと向かった。これが望まれての結婚ならば、二人で思い出を語りながら庭を歩いたりするのだろうか。
少し切ない気持ちになりつつ、ラシェルは庭の景色を目に焼きつけるようにじっと見つめた。
兄や妹と遊んだ庭や、母と一緒に花を育てた花壇など、見る場所全てに思い出が詰まっていて涙がこみ上げてくる。
その時、背後から近づいてくる足音が聞こえた。レナルドが戻ってきたのだろうかと振り返ったラシェルは、驚きに目を瞬いた。
「セヴラン様」
また約束もなしに訪ねてきたセヴランは、息を切らして酷く焦った様子だ。どうしたのだろうと首をかしげていると、彼はラシェルの手を握った。掴まれた手の痛みと汗ばんだ感触に、ラシェルはほんのりと嫌悪感を抱く。
セヴランは呼吸を整えると、ラシェルをにらむように見つめた。
「ラシェル、おまえ……ヴァンタール侯爵と結婚するって本当か?」
「え? えぇ、そうですけど」
「なんでだよ、そんな勝手に……」
「えっ?」
何故彼がこんなにも怒っているのか分からず戸惑うのと同時に、ラシェルとレナルドの結婚はもう広まりつつあるのだなと思う。
「おまえの家の借金を、ヴァンタール家が肩代わりしてくれたってことか? おまえはそれでいいのか?」
「もちろん、私は自分の意志でこの結婚をお受けしました」
「でも、おまえ泣いてるじゃないか」
「そうか。それなら俺は馬車に戻っている。時間は気にせず、ゆっくりしてくるといい」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて、ラシェルは庭へと向かった。これが望まれての結婚ならば、二人で思い出を語りながら庭を歩いたりするのだろうか。
少し切ない気持ちになりつつ、ラシェルは庭の景色を目に焼きつけるようにじっと見つめた。
兄や妹と遊んだ庭や、母と一緒に花を育てた花壇など、見る場所全てに思い出が詰まっていて涙がこみ上げてくる。
その時、背後から近づいてくる足音が聞こえた。レナルドが戻ってきたのだろうかと振り返ったラシェルは、驚きに目を瞬いた。
「セヴラン様」
また約束もなしに訪ねてきたセヴランは、息を切らして酷く焦った様子だ。どうしたのだろうと首をかしげていると、彼はラシェルの手を握った。掴まれた手の痛みと汗ばんだ感触に、ラシェルはほんのりと嫌悪感を抱く。
セヴランは呼吸を整えると、ラシェルをにらむように見つめた。
「ラシェル、おまえ……ヴァンタール侯爵と結婚するって本当か?」
「え? えぇ、そうですけど」
「なんでだよ、そんな勝手に……」
「えっ?」
何故彼がこんなにも怒っているのか分からず戸惑うのと同時に、ラシェルとレナルドの結婚はもう広まりつつあるのだなと思う。
「おまえの家の借金を、ヴァンタール家が肩代わりしてくれたってことか? おまえはそれでいいのか?」
「もちろん、私は自分の意志でこの結婚をお受けしました」
「でも、おまえ泣いてるじゃないか」