塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「記憶が戻って、すごく混乱した。ラシェルは俺のことを好きじゃないと思っていたのに、まるで俺を愛しているかのように振舞ってくれていただろう。どっちがきみの本心なんだろうって」

「ごめんなさい。病院でユーグさんに私たちが仲睦まじい夫婦だって言われてしまって、訂正できなくて……」

「謝らなくていい。俺がユーグに散々惚気ていたことは事実だし、あの状況でラシェルがそれを訂正できるはずがないことも分かってる。そのせいでラシェルが仲睦まじいふりをしてくれていることは分かったけど、それは俺にとってもすごく都合がよかった。このまま記憶を失ったふりをしておけば、ラシェルはそばにいてくれる。いつか本当に愛してもらえるようになるかもしれないって、思ってしまったんだ」

 そう言って、レナルドは少しうつむいた。一度唇を噛みしめると、決意をしたように顔を上げる。

「だから、嘘をついていたのは俺の方だ。本当にすまない」

「いえ、あの、謝らないでください……」

 慌ててラシェルが首を振ると、レナルドは微かに苦笑した。

「俺は、子供の頃からずっとラシェルのことが好きだったけど、きみはあの男……セヴランのことが好きだと思っていたんだ」

「えっ」

 突然ありえないことを口にされて、ラシェルは絶句した。ラシェルがセヴランを好きになったことなんて、一度もない。

 そんなラシェルを見ながら、レナルドは苦い笑みを浮かべる。

「だってきみたちは幼馴染で、一緒にいるところをよく見かけた。孤児院で再会した時には、あいつとキスをしているのも見たから……。だから、諦めようと思ったこともあった。結局無理だったけど」

「えっ、キスなんてしたことないです! 絶対に!」
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