塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、結局はきみ一人が家のために犠牲になったようなものだから。せめて居心地のいい環境を提供して、幸せに暮らしてもらえたらと思っていたんだ。なのにきみは、初日からあんな扇情的な格好で迫ってくるし……」

 初夜のことを思い出したのか、レナルドの頬は微かに赤く染まっている。同様にラシェルの頬も熱を持った。

「だ、だって、対外的には仲睦まじいふりをしておいた方がいいかなって思って……。それに私はレナルド様のことが好きだったから、むしろ嬉しかったというか……」

 慌てて言い訳するように言葉を重ねると、レナルドは驚いたように目を見開いた。

「あの、ラシェル。一つ確認してもいいかな。俺のことを好きだったというのは……いつから?」

「え? あぁそれは、孤児院でレナルド様に助けていただいた時からです」

「えっ……。俺はてっきり、記憶を失ったせいで仲睦まじいふりをしているうちに……ってことだと思っていたんだが」

 レナルドの言葉に、ラシェルは首を横に振った。甘く接してくれるレナルドにもう一度恋をするような気持ちになったことは確かだが、ラシェルが恋に落ちたのは、あの日で間違いない。

「だって、危険なところを助けてくださったかっこいい騎士様なんて、一目惚れするに決まってます。あの日からずっとレナルド様のことが好きで……。でも、身分が違いすぎることは分かっていたから、想いが叶うとは思っていませんでした。夜会で遠くにお顔を見られるだけで充分だって」

「俺もラシェルの姿を夜会で見るたび、遠くから見惚れてたよ」

 そう言って小さく笑ったレナルドは、「ラシェルがそんなに前から好きでいてくれたなんて」と嬉しさを噛みしめるようにつぶやいた。
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