塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
笑いながら、ラシェルはそっと身体を揺らしてみせた。その動きに合わせてゆらゆらと裾が揺れたそのドレスは、レナルドの瞳の色と同じ明るい緑だ。以前仕立てたドレスは自分の前だけで着るものだからと、レナルドはまた新しいドレスを仕立ててくれたのだ。もちろんこれも高級なもので、胸元から裾に向かって黒い宝石が散りばめられている。イヤリングやネックレス、ブレスレットや靴の装飾に至るまで、全てが緑で統一されているので、ラシェルは全身でレナルドの色を纏っていることになる。
「あぁ、そうだな。きみは俺のものだ」
満足げにうなずいたレナルドを見つめながら、ラシェルはそばの小箱にそっと手を伸ばした。手のひらに収まるくらいの大きさのその箱の中には、青い宝石をあしらったラペルピンが入っている。その色は、ラシェルの瞳の色と同じだ。
「……それは」
驚いた様子のレナルドに、ラシェルは小さく笑った。
「私だって、レナルド様は私のものだってアピールしたいんです。だから、これを着けてくださると嬉しいです」
「もちろんだ。なんなら仕事にもつけていきたいくらいだ」
感激した様子で何度もうなずくレナルドの胸元に、ラシェルはそっとラペルピンを飾る。愛する人が自分の色を身に着けているだけで、こんなにも満たされるとは思わなかったと、ラシェルは幸せなため息をついた。
レナルドも嬉しそうに何度も指先でラペルピンを撫でたあと、ラシェルを抱き寄せた。
「ありがとう、ラシェル。きみが俺に対する独占欲をあらわにしてくれるなんて……本当に愛してる」
「私も愛してます、レナルド様」
「……このままベッドに連れ込んでしまいたい」
耳元でそんな本音が聞こえたが、ラシェルは笑ってそれを受け流した。