塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「そろそろ、出発の時間ですよ」

「分かってる……。だから、今はこれだけ」

「え? あ……っ」

 ラシェルの胸元に顔を寄せたレナルドが、ドレスをほんの少し引き下げる。露出した肌に吸いつかれて、ちくりと甘い痛みを感じた。

 彼が唇を離せば、胸元の白い肌に赤い痕が浮かび上がっていた。一応ドレスで隠れる場所ではあるが、動いた拍子に見える可能性もある。

「あ、こんな……場所に……っ」

「ドレスで隠れる場所だし、ちゃんと俺のそばにいれば見えない」

 レナルドの言う通り、彼にしっかりと寄り添っていれば見えることはないだろう。だが、身体を離せば動いた拍子にドレスがずれるかもしれない。きわどい場所に赤い痕がつけられていることを秘密にするためには、レナルドから片時も離れられないということだ。

「だから、ずっと俺のそばにいて、ラシェル」

「もう……困った人」

 悪戯っぽい顔でそんなことを言われたら、ラシェルは何も言えなくなってしまう。少しだけ眉尻を下げて笑い、ラシェルはレナルドにしっかりと身体を寄せた。

「絶対に、離さないでくださいね」

「もちろん」

 甘い微笑みと共にうなずいたレナルドが、そっと顔を近づけてくる。彼の意図を察知して、ラシェルはそっと目を閉じた。

 一度深く唇を重ねたあと、二人は寄り添って夜会へと向かった。
 
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