塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
少しだけレナルドと一緒に過ごせるのではないかと期待した気持ちを振り払うように、ラシェルは本を手に取った。
その日から、ラシェルは書庫で過ごす時間が増えた。自室にいてもすることがないし、読書に没頭していれば何も考えずにすむ。ただ、前は好んで読んでいた恋愛小説からは手が遠のくようになった。愛し愛される幸せな話を読むと、自らの環境と比べて落ち込んでしまうから。
薬草の本を読んでいたラシェルは、ふと見覚えのある花を見つけて口元を緩めた。
「金蓮花だわ」
丸みのある花弁が可愛らしい鮮やかな赤や黄色の花は、実家の庭でも育てていたものだ。花や葉は食用で、ぴりっとした辛みがサラダのアクセントになってお気に入りだった。
「へぇ、種には抗菌作用があるのね。知らなかった」
つぶやきながら、ラシェルは本に書かれた説明文を更に読み始めた。花にも滋養効果があることや、しっかりとした大きな葉は盾に例えられ、騎士をイメージした花と言われることなどが書いてある。
「花言葉も『勝利』だものね。騎士にはぴったりだわ。黄色い花には『光の導き』なんて花言葉もあるくらいだし、押し花をお守りにしてレナルド様に渡すのは……。うん、ありえないわね」
思わずレナルドのことを考えてそんなことを口にしてみるが、現実的ではないなと即却下する。渡したところで、困惑される未来しか見えない。報われない想いを抱き続けている自分に苦笑を漏らしつつ、ふと遠い昔にも同じようなことをしたなと思い出した。
確かあれは、まだラシェルが十にも満たない子供だった頃。積極的な社交をほとんどすることのないブラン男爵家が珍しく参加した、王妃主催の茶会でのことだった。
その日から、ラシェルは書庫で過ごす時間が増えた。自室にいてもすることがないし、読書に没頭していれば何も考えずにすむ。ただ、前は好んで読んでいた恋愛小説からは手が遠のくようになった。愛し愛される幸せな話を読むと、自らの環境と比べて落ち込んでしまうから。
薬草の本を読んでいたラシェルは、ふと見覚えのある花を見つけて口元を緩めた。
「金蓮花だわ」
丸みのある花弁が可愛らしい鮮やかな赤や黄色の花は、実家の庭でも育てていたものだ。花や葉は食用で、ぴりっとした辛みがサラダのアクセントになってお気に入りだった。
「へぇ、種には抗菌作用があるのね。知らなかった」
つぶやきながら、ラシェルは本に書かれた説明文を更に読み始めた。花にも滋養効果があることや、しっかりとした大きな葉は盾に例えられ、騎士をイメージした花と言われることなどが書いてある。
「花言葉も『勝利』だものね。騎士にはぴったりだわ。黄色い花には『光の導き』なんて花言葉もあるくらいだし、押し花をお守りにしてレナルド様に渡すのは……。うん、ありえないわね」
思わずレナルドのことを考えてそんなことを口にしてみるが、現実的ではないなと即却下する。渡したところで、困惑される未来しか見えない。報われない想いを抱き続けている自分に苦笑を漏らしつつ、ふと遠い昔にも同じようなことをしたなと思い出した。
確かあれは、まだラシェルが十にも満たない子供だった頃。積極的な社交をほとんどすることのないブラン男爵家が珍しく参加した、王妃主催の茶会でのことだった。