塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 囁くように名前を呼ばれると同時に、頬に触れる手が上を向くよう促す。まっすぐに見つめる瞳から逃れたくて思わず目を閉じたら、唇に柔らかなものが触れた。

 キスをされていることに気づいて、ラシェルの肩が跳ねる。だが、レナルドがしっかりと抱きしめているから逃げることができない。

 確かめるように何度か触れたあと、今度は強く唇を押し当てられた。弾みで開いた唇の間から、熱く濡れたものが滑り込んでくる。

 ラシェルの口の中を探るように動くものが、彼の舌であると認識した瞬間、全身がカッと熱くなった。

 思わず小さな声を漏らすと、レナルドの舌は更に貪欲に動き始めた。狭い口内で、彼は器用にラシェルの舌を掬い上げると何度も擦りあわせるように絡めてくる。

 逃げようとしても許してもらえず、むしろ強く舌を吸われて、背中をぞくぞくとしたものが駆け上がっていく。

 唇を触れあわせるだけのキスだって初めてだったのに、こんな深いキスをすることになるなんて。

 息苦しさはあるが、お互いの舌を絡めあうと心地よくて、腰のあたりが疼くような感覚になる。

 気がつけば、ラシェルは抵抗も忘れて甘いキスに溺れていた。

 どれほどそうしていたのか分からないが、ようやくレナルドの唇が離れていった時には、ラシェルは肩で息をするほどになっていた。

「あぁ、そんな顔をされたらまずいな。我慢ができなくなりそうだ」

 親指でラシェルの濡れた唇を拭ったレナルドは、眉尻を下げて笑う。微かに目元を赤く染めた彼の顔は、見たことがないほどに艶めいていて、ラシェルの体温がまた上がった気がした。
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