塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 キスに夢中になってしまったことが恥ずかしくて身じろぎしたラシェルは、腿のあたりに何か硬いものが当たったことに気づいた。鍛えているレナルドの身体は筋肉質で、確かに硬くはあるのだが、それとはまた違うような気がする。

 ラシェルの視線に気づいたレナルドは、照れたような顔で少し体勢を変えた。

「……ごめん、この状況でがっつくつもりはないんだけど、やっぱりラシェルとキスをしていたらこうなるのは自然というか……」

「え? ……あっ」

 どういう意味かと一瞬きょとんとしたラシェルだったが、彼の身体に起きている変化に思い当たって目を見開いた。

 つまり彼は今、ラシェルに欲情して身体を昂らせているということだ。

 本当にレナルドは、ラシェルを抱きたいと思っているのだろうか。記憶を失ったことで、これほどまでに変わるものなのだろうか。

 ラシェルの戸惑いに気づいたのか、レナルドは抱きしめる腕の力を少し緩めた。

「さすがに今日はやめておく。だけど、俺は過去の自分にすら嫉妬しそうなんだ。俺は、きみをどんな風に抱いた? ラシェルは、俺の腕の中でどんな顔を見せたんだろう。覚えていないことが、歯痒くてたまらないな」

「それは……」

 ラシェルの脳裏に、初めての夜のことが浮かぶ。淡々と行為を済ませたあの日以降、レナルドはラシェルを抱くどころか触れようともしなかった。

 だけど今の彼は、二人は何度も熱く甘い夜を過ごしたと思っているのだろう。

 何も言えずに黙ったラシェルを見て、レナルドは違うように受け取ったらしい。

「きみの口から色々と聞きたい気持ちはあるけど、さすがに恥ずかしいか。過去の俺に負けないくらい、精一杯愛すると約束するから、どうか今の俺も受け入れて」

「……えぇ、もちろんです」
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