塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「……セヴラン様」
出迎えも何も、会う約束などしていないのだが、彼は何故か頻繁にラシェルを訪ねてきては一方的に話をして帰っていく。領地が隣だし年も近いので、昔からそれなりに交流はあるものの、ラシェルは彼が苦手だ。伯爵家と男爵家という身分の違いがあることはもちろん理解しているのだが、あからさまに見下した態度を取られるので、あまり気分がよくないのだ。
勧められる前にソファにどっかりと腰を下ろしたセヴランは、自分のすぐ隣を指差した。
「座れよ、ラシェル」
「……」
恋人でも婚約者でもないのに、どうして彼と密着して座らねばならないのだろう。だが拒絶したら、セヴランはきっと機嫌を損ねる。以前にも似たようなことがあった時には兄のエリクが止めてくれたのだが、その後しばらくノディエ領との間にかかる橋を使わせてもらえなくなるという嫌がらせを受けた。
領民に迷惑をかけるくらいなら、多少腰を撫でられるくらい我慢すべきだろう。ラシェルは内心でため息をつくと、何か言いたげな父と兄を視線だけで制止してセヴランの隣へと向かった。
なるべく身体を離して座ったが、セヴランの腕が腰に回されて引き寄せられた。ぞわりと寒気がするのを堪えて、ラシェルは無表情を貫く。
「聞いたよ、随分と借金を抱えて困ってるらしいじゃないか」
機嫌よさそうにセヴランが口を開いた。あちこち金策に駆け回っていたので、きっと噂になっているのだろう。セヴランはラシェルの腰を抱く腕に力を込めると、にんまりと笑みを浮かべた。まるでラシェルたちが困っているのを楽しんでいるようなその表情に、思わず嫌悪感を抱く。
「おれが、援助してやろうか?」
「それは……」
出迎えも何も、会う約束などしていないのだが、彼は何故か頻繁にラシェルを訪ねてきては一方的に話をして帰っていく。領地が隣だし年も近いので、昔からそれなりに交流はあるものの、ラシェルは彼が苦手だ。伯爵家と男爵家という身分の違いがあることはもちろん理解しているのだが、あからさまに見下した態度を取られるので、あまり気分がよくないのだ。
勧められる前にソファにどっかりと腰を下ろしたセヴランは、自分のすぐ隣を指差した。
「座れよ、ラシェル」
「……」
恋人でも婚約者でもないのに、どうして彼と密着して座らねばならないのだろう。だが拒絶したら、セヴランはきっと機嫌を損ねる。以前にも似たようなことがあった時には兄のエリクが止めてくれたのだが、その後しばらくノディエ領との間にかかる橋を使わせてもらえなくなるという嫌がらせを受けた。
領民に迷惑をかけるくらいなら、多少腰を撫でられるくらい我慢すべきだろう。ラシェルは内心でため息をつくと、何か言いたげな父と兄を視線だけで制止してセヴランの隣へと向かった。
なるべく身体を離して座ったが、セヴランの腕が腰に回されて引き寄せられた。ぞわりと寒気がするのを堪えて、ラシェルは無表情を貫く。
「聞いたよ、随分と借金を抱えて困ってるらしいじゃないか」
機嫌よさそうにセヴランが口を開いた。あちこち金策に駆け回っていたので、きっと噂になっているのだろう。セヴランはラシェルの腰を抱く腕に力を込めると、にんまりと笑みを浮かべた。まるでラシェルたちが困っているのを楽しんでいるようなその表情に、思わず嫌悪感を抱く。
「おれが、援助してやろうか?」
「それは……」